脳死提供で膵島移植実施へ 1型糖尿病患者対象に 今夏にも厚労省に申請
共同通信社 5月14日(月) 配信


 脳死者から提供された膵臓(すいぞう)から、血糖値を調整するホルモンのインスリンを分泌する「膵島(すいとう)」を取り出して糖尿病患者に移植する国内初の治療を、日本膵・膵島移植研究会(事務局・福島県立医大)が計画していることが12日、分かった。今夏にも、費用が一部保険適用される高度医療の申請を厚生労働省にする。

 膵島は膵臓の中にわずかにある組織で、薬剤でばらばらにして点滴で患者の体内に入れる。対象患者は、インスリンを分泌できない1型糖尿病で、特に低血糖で倒れる発作が多い人に限る。膵臓の移植は大手術となり、体の負担が大きすぎる患者にとって治療の選択肢が広がる。

 国内で膵島移植を希望する患者は約120人いるとされる。

 2010年の改正臓器移植法施行で、家族の承諾による脳死者からの臓器提供が急増し、膵臓も増加。だが提供者が肥満の場合、手術や移植後の経過にリスクがあり、移植を断念することもあったという。膵島移植ならその心配がなく、より多くの移植機会が望めることも背景にある。

 心臓死からの膵島移植は高度医療で認められており、6月から始まる。脳死提供でも認められれば、両方を合わせて2年間で約20人に実施する方針。実施施設は、東北大、福島県立医大、国立病院機構千葉東病院、京都大、大阪大、福岡大を予定している。

 日本では04年から07年に、18人に対して心臓死からの膵島移植が実施された。当時、膵島を取り出す薬剤に牛海綿状脳症(BSE)の感染の恐れが生じたため中断した。現在、薬剤は改善されたという。