2012年03月28日

 アルマール(高血圧治療薬)とアマリール(経口血糖降下薬)
 ノルバスク(高血圧治療薬)とノルバデックス(抗乳癌剤)
 アイデイト錠(高尿酸血症治療薬)とアイデイトロール錠(β遮断薬)
 マイスタン錠(抗てんかん薬)とマイスリー錠(入眠薬)

 医薬品の名称が類似していることから、誤投薬するケースが後を絶ちません。これらは、3月22日に開催された厚生労働省の医療安全対策検討会議 医薬品・医療機器等対策部会で報告された事例です。医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業の事例について定期的に分析して、同部会に報告しています。

 医療機関における2011年1月から6月までのヒヤリ・ハットや医療事故の事例の分析では、(1)製造販売業者等による対策が必要または可能な事例、(2)製造販売業者等により既に対策が取られている、または検討中の事例、(3)ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例、などに分析されます(当コーナーに、厚労省資料の抜粋を添付)。前述のケースは(1)または(2)に該当。アルマールについては既に企業が既に名称変更の申請をしています。

 企業の対応も必要ですが、「薬歴を確認するなど、もっと医療者もやるべきことがある」。こう指摘したのは、国際医療福祉大学付属病院薬剤統括部長で、日本病院薬剤師会理事の土屋文人氏。名称の類似薬の変更には時間がかかる上、「誤投与」の原因は、類似薬に起因するもの以外にもあるからです。

 例えば、「前医の紹介状にて、『アレビアチン10%散1.8g』との記載があったため、そのまま1800mgとして処方」され、「力価と秤量の処方の違いを理解できていなかった。薬剤師の問い合わせに対しても、耳を貸さなかった」と報告されています(当コーナー添付資料の9ページの事例3)。これは、二つの要因が交錯して生じた事例。

 一つは、疑義照会のあり方。慶応義塾大学薬学部教授の望月真弓氏は、「耳を貸さなかった、とあるが、問い合わせの仕方にも問題があったのでは」とコメント。土屋氏も、「薬剤師が、『これでいいですか』と聞けば、『いい』と答えがち。問い合わせる薬剤師も、なぜ疑義照会するのか、それを説明し、医師の処方意図を確認するのが役割」と指摘。

 薬局におけるヒヤリ・ハット事例収集・分析事業に関する検討では、2011年1月から6月までの間に報告された3487例の中には、「疑義照会」に関するものが、252例含まれています。疑義照会により事故防止につながっているため、疑義照会が有効に機能するよう、何を疑義照会したか、その記録を残し、医師等にフィードバックする必要性も指摘されました。

 もう一つが、散剤の記載のあり方。厚生労働省は2010年1月の「内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会報告書の公表について」という通知で、散剤については、「薬名を製剤名で記載し、分量は製剤量を記載することを基本とする。例外的に、分量を原薬量で記載した場合には、必ず【原薬量】と明記する」としています。「g(グラム)で記載した場合には製剤量、mg(ミリグラム)だったら原薬量をそれぞれ意味する、と教えていた大学もある」(土屋氏)ことも、混乱の要因。

 医薬品・医療機器等対策部会では、同様のヒヤリ・ハットや事故が繰り返される現状を問題視する意見も出ました。多数の事例が報告されても、また添付文書が改訂されても、それが周知徹底され、活用されなければ意味がありません。この辺りの工夫も、今後の課題です。