【民主 漂流】

禁じ手人事、お構いなし 民主党内反発「最後の悪あがき」

2011.6.28 08:54

 政府・民主党幹部から8月末までの退陣を突き付けられながらも、延命に向け政権基盤を強化しようと菅直人首相は執念をみせた。原発事故担当相として細野豪志首相補佐官を起用したほか、自民党議員を一本釣りして復興担当の政務官とする“禁じ手”に出るなど、なりふりかまわずに人事権を行使した。民主党内からは「最後の悪あがき」との反発が一層強まった。

自民から一本釣り

 27日夜、官邸での記者会見で、首相は退陣のめどとして再生エネルギー特別措置法案など3案の成立を挙げた。条件を明確にしたようにみえるが、首相は相変わらず具体的な退陣時期には触れなかった。今国会の会期内に成立しなければ、9月以降も続投する「居座り宣言」と言える。

 輿石東(こしいし・あずま)参院議員会長が70日間の延長国会を「バトンゾーン」にたとえるなど、政府・民主党幹部はこの間に首相交代のバトンリレーを実現させようとしている。

 だが、首相には唯々諾々と従う気はさらさらない。この日午後、官邸の執務室で向き合った国民新党の亀井静香代表に首相はこう切り出した。

 「原発事故担当相には細野氏を起用したい」

 原発事故発生直後から一貫して対応にあたってきた海江田万里経済産業相の任務を奪う形で、細野氏を“抜擢”したのだ。

 これまで「首相に度々怒鳴られながらも耐えてきた」(首相周辺)海江田氏だが、首相への不満は強い。従来の原発重視から再生可能エネルギーへの転換を目指す首相にとって、若い細野氏のほうが自らの意向を通しやすいとの思惑もある。

 首相は野党の中にも手を突っ込んだ。自民党の浜田和幸参院議員を復興担当の総務政務官として起用したのだ。

 当初首相が目指したのは野党から十数人を引き抜き、参院で過半数を確保して、これまで政権を悩ませてきた「ねじれ」状態を解消することだった。呼応したのは浜田氏だけだが、首相の狙いは今、別なところにあるかもしれない。

 浜田氏引き抜きで反発を強める自民党との対立を激化させる。野党が法案審議に応じず、態度を硬直化すればするほど、2次補正など首相が退陣条件に掲げる3つの成立が困難になる。そうなれば、おのずと辞める必要はない。

反発ばかり

 そんな首相の手法に民主党内からは批判の声が相次いだ。27日の党役員会で声を張り上げたのは仙谷由人官房副長官だった。

 「こんなことをしたら、大変なことになる。よりによって石破茂自民党政調会長の地元から引っこ抜くなんて」

 安住淳国対委員長も続いた。

 「国会運営が困難になるぞ。これで70日間で重要法案が通らなくなった」

 人事でも、首相は退任する馬淵澄夫首相補佐官を経済産業副大臣に起用しようとしたが拒否された。

 国土交通相を務めた馬淵氏にとっては、補佐官を外されたうえ副大臣では、事実上“降格”であり、首相への不信を示したといえる。

 与野党ともに反発を強める中で、首相が「脱原発」を掲げて解散に打って出る可能性も、消えてはいない。

 与党幹部は自嘲気味につぶやいた。

 「辞めるといった人は、失うものがないから強いね」(小島優)

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110628/stt11062808570001-n1.htm

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110628/stt11062808570001-n2.htm