2010年07月27日

 先日(7月16日)、厚生労働省の「第七次看護職員需給見通しに関する検討会」は「第七次看護職員需給見通し(暫定版)」を公表しました。これは2011年度から5年間の需給バランスを推計したもの。関係資料は厚労省のホームページに掲載されていますが、各年度とも「需要見通しが供給見通しを上回る」状況(資料2:PDF701KB)。例えば、最終年度の2015年の需要見通し150万人に対し、供給見通しは、148万4600人となっています(いずれも常勤換算数、以下、同様)。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000eydo.html;http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000eydo-att/2r9852000000ezci.pdf
 これは、「需要見通しと供給見通しの差」は年々縮小するという前提での推計。「新卒就業者数の増加」(5年間で、年4万9500人から年5万2900人に増加)と「再就職者数の増加」(5年間で、年12万1000人から年13万5300人に増加)を見込んでいます。一方で、「退職等による減少数」は、5年間で年14万3500人から年15万300人への増加にとどまると推計。

 ただし、「第六次看護職員需給見通し」(参考資料2:380KB)の2010年度の供給見通しは139万500人でしたが、今回の「第七次」での2011年度の「供給見通し」は134万8800人と下回っています。つまり、供給の推計と実際ではかい離が生じるため、このトレンドが続けば、推計よりも供給不足になることが予測されます。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000eydo-att/2r9852000000f09x.pdf;http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000eydo-att/2r9852000000ezyb.pdf
 看護職員の需給バランスを均衡させるためには、18歳人口が減少する時代にあって、いかに退職者を減らし、再就職者を増やすかがカギ。「第七次看護職員需給見通し(暫定版)」の策定に当たって、病院や診療所の看護担当責任者などを対象に実施した実態調査によると、「常勤退職者の主な退職理由」は、1位が「本人の健康問題」で、以下、2位「人間関係」、3位「家族の健康・介護問題」と続きます(資料4:PDE1894KBの1ページ目)。

 「看護職員の定着促進を促すために効果をあげている取組」は、1位「有給休暇の取得促進」、2位「人を育て、個人を大切にする風土づくり」、3位「超過勤務削減のための取り組み」の順。

 日本看護協会では今年度の最重点課題として、看護職員の「労働条件の改善・環境改善」を掲げています(『看護職の離職防止対策が急務、日本看護協会』を参照)。今回の調査結果を見ると、夜勤回数の削減や、日勤と深夜勤とのシフト間隔確保なども重要ですが、それに加えて、「人間関係」「人を育て、個人を大切にする風土づくり」も視野に入れた取り組みが必要であることが分かります。

 また、看護職をめぐっては、厚労省の「チーム医療推進会議」で、看護師の業務範囲の見直しやチーム医療の推進に関する検討が進められています(『「特定看護師」のモデル事業は四大学で実施』を参照)。現在の議論は、一定の医行為を行う「特定看護師」(仮称)の議論が中心。しかし、先の実態調査によると、例えば認定看護師を配置している病院は2009年6月現在で6.4%にとどまり、今後2015年までの配置を予定している病院も14.9%であるなど、医療の現場では専門特化した看護師へのニーズは必ずしも高いとは言えません。「チーム医療推進会議」でも再三指摘が出ているように、看護職に限らず、医療現場での業務の全体像を捉え、いかに各職種で役割分担を進めるかという視点からの議論も重要です。
 
 ところで、医師の需給バランスはどうでしょうか。現在、厚労省は「必要医師数実態調査」(詳細は同省のホームページを参照)を実施中です。これは各病院に現在の医師数と必要数などを調査しているものですが、ある県の担当者は、「『必要医師数』の定義がないため、求人をしていない医師数も含めて出している病院も少なくない。結果的に必要医師数は多めに出てくるのではないか」との見方をしています。8月末にまとまる予定の結果が注目されます。


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