「医学部定員増だけではなく、教育の質維持が不可欠」◆Vol.9
国立大学医学部長会議常置委員会が三政党に要望書
2009年8月21日 橋本佳子(m3.com編集長)
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国立大学医学部長会議常置委員会は8月21日、自民、民主、公明の三政党に対し、医師数の増員に当たって
は、医学部定員増だけではなく、教育の質の維持のための措置も重要だとする要望書を提出するとともに、常置
委員会委員長の安田和則氏(北海道大学医学部長)が記者会見を開催した。
同じ席上、「大学医学部の教育病院のあり方に関する検討委員会」の委員長の嘉山孝正氏(山形大学医学部
長)も会見し、自民党と公明党のマニフェストに関する評価を公表した。「自民党のマニフェストは、時間がなかっ
たためか、各省庁から意見を集めたにすぎないのではないか。いい部分もあるものの、コンダクターがいて書い
たとは言えず、マニフェスト評価がやりにくかった。一方、民主党のマニフェストについては、具体的な施策が盛り
込まれており、評価する価値があったと見ている」(嘉山氏)。
8月21日記者会見する国立大学医学部長会議常置委員会委員長の安田和則氏(左)と、大学医学部の教育病
院のあり方に関する検討委員会委員長の嘉山孝正氏(右)。
「医師増のみでは医療の質低下を懸念」
要望書では、「昨年および今年の政府の施策を見ると、医学部入学者定員増のみが行われる中で教育の質の
維持への措置はなされず、地域枠の導入はむしろ問題を複雑化させており、政府は国立大学医学部長会議の
提言の本質を理解していない」と指摘。その上で各党のマニフェストについても、医学部定員増についての言及
はあるものの、教育の質を維持するための措置を明記していない点を問題視。
安田氏は、「医師の数だけではなく、いかに質の高い教育を行うかが重要であり、それがひいては医療の質向
上につながる。日本の医療は世界のトップレベルにあるが、このまま医学部定員増のみが行われることになれ
ば、医療レベルが下がる危険があり、国立大学医学部長会議として座視することはできない。従来は政府に提言
してきたが、国政選挙を控え、三大政党に今回は提言した」と説明した。
各論では、以下の5点を具体的に要望。「これらは相互に関連する施策であるため、どれか一部のみが実現す
ればいいわけではない。一部のみの実施はかえって事態を悪化させる。全体を計画的に善処するように各党に
お願いしたい」(安田氏)。
【国立大学医学部長会議常置委員会からの要望書】の骨子
1.人口当たりの医師数の国際水準までの引き上げを要望。国立大学医学部入学定員の計画的増員に加えて、
学生当たりの医学部教職員数を国際水準まで増員、定員増に見合った教育施設の整備、教育経費の措置、大
学設置基準の見直しなどが必要。高等教育費も国際水準に増額。
2.メディカルスクール構想には反対。メディカルスクールは、最終的に育成される医師の質を考えることなく、医
師数の増加のみを安易に企図するものであり、 質の悪い医師の濫造、医師の二層構造化につながる危険性が
高い。
3.基礎医学・社会医学、臨床医学のいずれの領域でも研究医が不足、10年後には基盤的医学研究・教育を行
う医系教員を確保できなくなる可能性が高い。医学部に起点を置く研究医養成のための具体的施策を直ちに進
めるべき。
4.大学病院の借入金(医学部のある42国立大学全体で1,003,511,324,000円)の解消、大学病院への運営費交
付金の増額を要望。
5.低医療費政策を改め、医療費を国際水準までの引き上げを要望。
※マスコミをはじめ、情報操作によって医療系従事者には『ミンス優勢』が報道され続けている。
非常に残念であることだ。目先のニンジンだけのミンスでは、日本は滅びてしまうだろう。