暮しの手帖


編集長


松浦弥太郎さん
の著書
サンマーク文庫


「軽くなる生き方」



今日は
第3章の
「自分の根っこ」を見つめ直す


からご紹介します。





アメリカ時代が教えてくれた「正直・親切」



「正直・親切」


これは今も、岩手県・花巻市に残っている、高村光太郎の書にある言葉だ。


旧山口小の小学生のために書かれたものだが、僕にとっての心の支えでもある。

「正直・親切」はシンプルな言葉だが、奥が深い。
いつも正直・親切であるのは難しいけれど、この言葉を忘れずにいれば、そうそう道は外れないと思う。


いつも正直・親切かどうかを自分に問いながら生きていれば、仕事に限らず、どんなことでも乗り切れると僕は信じている。


この境地にたどりつけたのは、アメリカ時代、自分が正直・親切と程遠い、もっといえば、まるで反対の暮らしまで堕ちたからだ。


賢い人であれば、頭で考えただけで、生きるべき道がわかるのだろう。
ところが僕はなんにつけ、自分で経験しないと理解できないようにできているらしい。


たとえ腐っていてまずいものだとしても、それを自分の足で食べに行き、


実際口にして「まずい」と感じ、

それでも全部平らげておなかを壊さないと、

なにがおいしいものなのかもわからないという、
ちょっと厄介な性分なのだ。





続く……