「この映画は事件だ―。」
無名作品がヴェネツィア映画祭で最も話題に!
世界に名だたる一流紙で論戦を勃発させた問題作。
2011年、第68回ヴェネツィア国際映画祭。日本では「ヒミズ」のマルチェロ・マストロヤンニ賞受賞が大きく報じられていたその裏、現地では衝撃的な映画のプレミア上映が話題を攫っていた。その作品は3大映画祭で報じられるような有名監督作でもなく、世界的なスターが出演している訳でもなく、かつバジェット的にも厳しいものであったが、初回上映が終わるや否や「衝撃の必見作!」「今年一番の危険物!」「事件発生!」「観たら分かる!」と批評家たちがこぞって紹介し、国際的に報道されることとなる。
ローマに不時着した一見可愛らしく友好的な宇宙人が「中国語」を話すことから不信感を強く持ったイタリア秘密警察がその宇宙人を拷問する。果たして宇宙人は白か黒か?とう設定が物議を醸したのだ。
この映画に対し最初に反応したのは、米ウォール・ストリート・ジャーナル。記事の中で「この映画は中国の経済力と世界における影響力が強まり、西側に困惑と誤解をもたらしたことを示している。」 と評論。
これに、北京の夕刊 『法制晩報』 が反応する、「ストーリーには象徴的な意味がある。 通訳は王さんの到来を平和目的だと理解するが、中国語や宇宙語がわからない政府の役人たちは、王さんを侵略者だと決めつけた。 (中略) そして安全を理由に王さんを暗室に閉じ込める。 秘密警察はこの宇宙人をもともと理解したくなかったのだ」 とし、映画に中国人の外国進出を重ね合わせた 『ウォール・ストリート・ジャーナル』 への反論ともとれる主張を載せる。
これに多様な媒体が追随「台頭する中国への西側社会の不信。」「中国人差別を助長する。」「できるものなら中国で公開してみたらいい。」などと追随、論戦は国際問題にまで発展する。
一方、イタリアで公開されると映画ブロガーたちは『普通に王さんがキモ可愛い。』『ネタバレだけどラスト鬼!』『今年一番おもしろい!』『王さんの拷問シーンに泣いた。』などと別方向で盛り上がり、大ヒットを記録。未だかつて無いイタリア映画史上に残る話題作となった。