店長であろうお兄さんはいつものように手際よく作り始めた。


「ライムライスは入れますか」


その一言を期待したが、馴染み客までの道のりは長く泡に消えた。


旦那がお金を払っている間の私はお客さんのフレンチブルドッグと遊んでいた。


帰り道


旦那が「ライムライス入れてた?」と聞いてきた。


まさか。


その問題は終止符を打ったのではないか。


あんなに盛り上がったおしゃべりもどこ吹く風


肝心なシーンを2人とも見ていなかった。


「入れてないと思うよ」


注文していないのだからそう思ったが自信はない。


不覚にも見損ねたのだから。


家に帰ると旦那が袋から出したタコスを見て言い放つ。


「なんと」


キッチンにいた私はまさかという気持ちを押し殺し


タコスを見に行くと事件が起きていた。


「なんと」


ライムライスの入ったタコスが綺麗に3つ並んでいる。


目が点になった私たちはお互いの顔を見て、吹き出した。


いつものタコスと把握して持たせた店長。


これは、もう店長をアミーゴと呼んでいいレベルだ。


回数を重ね、アミーゴの中で旦那はライムライスの馴染み客になっていた。


これからは「いつもの」とだけ言えば出てくるかもしれない。


だがしかし、ライムライス抜きのタコスを食べたい時が困った。


「今日はライムライスは抜いてください」とわざわざ断りを言うべきだろうか。


旦那は「うまい」と食べながらこれからの注文方法を悩んでいた。