ハラキリ旦那の入院生活が始まる。
メスで切ったお腹の傷口を見せてもらう。
送られてきた写真から目が離せない。
傷口は黒い血の塊色に染まっている。
その周りはまだ黄色っぽくなんとも生々しい。
固唾を飲みながら傷口にペタペタと貼ってある白いテープの枚数を数えた。
なんとも痛々しいこと。
背筋がゾワっとし力が抜け鳥肌が立つ。
肋骨の下から臍の下のその下まで、なんと8枚ものテープで固定されていた。
さすが15cmは迫力がある。
日本古来の切腹がふと頭をよぎる。
侍は凄まじくもあり凄惨(せいさん)な行為をよくしたなと。
恐ろしい。
切腹を習慣としていた時代は正気の沙汰とは思えない。
しかしそれが武士道を貫くとされていた時代なのだ。
いったい15cmのメスが入るとはどんなものか。
21時10分。
私はおもむろに油性マジックを手に取った。
上着を脱いで鏡の前に立つ。
肋骨の下から臍の下まで15cm。
躊躇なくマジックでスーっと書いてみた。