コンビニへ旦那の靴下とパンツを買いに行く。
ボクサー派だがお腹を切っているとなると…
トランクスのがいいのではとふと思う。
だが、いつもと同じようにボクサーを手に取った。
しかし後日トランクスを買い揃える事となる。
これから開腹手術をする男性には是非オーバーサイズで優しいゴムのトランクスをお薦めしよう。
さらに長袖Tシャツは無印良品のオーガニックコットンが柔らかくて気持ちがいい。
待合室に戻ると辺りはさらに真っ暗だった。
以前は夜中の12時まで点灯していた東京タワーも今は10時に消えてしまう。
ふーっと長いため息を付きソファーに腰掛ける。
肩甲骨がバキバキだ。
ヨガのなんちゃらナーサでセルフ筋膜剥がしもどきをポージングすると見事にミシミシ音を立てた。
身体も心も手間暇かかる。
錆びた自転車に油を差すように簡単にはいかないものだ。
23時40分
旦那の手術が終わった。
マツエクの黒い目ヤニはもうどこにも見当たらない。
太いアイラインも汗で消えている。
まるでひとっ風呂浴びたのかと思うほどスッキリ晴れた面持ちだった。
手術はうまくいったんだ、一生懸命やってくれたんだとこの表情が語っている。
輸血もなし、大腸も問題なく人工肛門のストーマ装着も必要なし、腸管の状態が不良になり体液を外に出すための外付けの袋も付ける必要なし。
よし。
とりあえずよかった。
お昼の12時50分ごろ救急車で運ばれ、検査し転院し、20時にオペ室へ入り、終わったのが23時40分。
得体の知れない原因不明の腹痛にもがき苦しみ、激痛と嘔吐を繰り返し悶絶していた8時間はまさに生き地獄だったことだろう。
切った小腸の写真はやはり撮れなかった。
所有者は本人のはず。
その権利を断られたくらいだ
ましてや触ることなどできまい。
最後に切りたてほやほやの1.5mの行方を聞いてみる。
「小腸は捨てちゃうんですか?」
マツエクは唸る。
「んー、組織を病理検査へ持ってって腐ってますねと言われるだけでしょう」
それが絞り出した答えだった。
1.5mあるとは思えないほどお行儀よく25cmほどの膿盆に横たわったシワシワの小腸。
今までありがとう。
ところで私は術後の旦那と面会できるのだろうか。