そら豆に収まったカレー臭のシマチョウ。
旦那の1.5m、切りたての腐った小腸のことである。
カレー好きの旦那だ。
きっとお昼はカレーだったに違いない。
シワシワの小腸は綺麗に洗浄してあった。
B級ホラーでお馴染みの内臓飛び出し血流どっばー的なものではなく
皮であろう部分は白く、脂肪であろう部分は赤いのがみてわかる。
マツエクからは「見ますか?」と言ってこない。
「切った小腸ですか?」
私は覗き込む仕草をする。
薄いガーゼが2枚ふわりとかぶせてあった。
高級黒毛和牛の熟成肉に見覚えのある、あのガーゼ。
ローストビーフも寝かしつける時ガーゼで包むと旨みが凝縮されるものだ。
肉とガーゼは相性がいい。
そのガーゼを1枚ぺらっとめくってみせた。
「よく頑張ったね、ありがとう」
思わず話しかけてしまったではないか。
そっとマツエクに目をやると
彼女は訝しげな表情は見せない。
「そうですね」と優しい言葉で反応する。
不思議なもので腐っているであろう小腸を見ても全く不快な気持ちは湧いてこない。
頑張った1.5mを褒めてあげたかった。
グロくもない。
キモくもない。
ピンク色を失ったレバー色のそいつがむしろ愛おしく思えた。
後悔したくない。
もう見ることはできないかもしれない。
最後かもしれない。
私は意を決して思わず言った。
「写真撮っていいですか?」