ある初夏の頃、その頃の私と飼猫のボス、ファイトは 深夜になると家の庭の見回りをしていました。私とファイトとはリードでつながっています。小さな庭と家の裏側と階段を登り、物干し台を確認します。それで1日を終えるのです。


いつものように、私達は庭の見回りをして、階段を登って物干し台に出ると、その日は満月でとても明るい夜でした。その美しい月を、しばらく、物干し台の上で眺めていました。ゆったりと静かな時間が流れていきました。


物干しから見た 目の前には庭の椿の木があります。その木の後ろ側に道路、向かいには民家があります。

その民家から 何か素早く生き物が道路を越えてこちらに、走ってきました。


猫にしては、しっぽが膨らんでいてとても長いのです。イタチのようでした。うちの物干し台の横側は、お隣との境に溝があります。イタチは、道路を越えて溝に走り込んできて、あっという間にいなくなってしまいました。


私もファイトも、驚いてしまいました。けれども、すぐに、静かな時間に戻っていきました。


しばらくすると、道路にまた小さな生き物が現れました。こちらに来ますが、今度は、とてもゆっくりで、頭に何かを持っているようでした。


それは、ハサミでした。月の光に照らされてハサミの影が出来てゆっくり動いていました。その生き物はアメリカザリガニでした。


アメリカザリガニが、ゆっくり道路を越えて来たのです。そしてまた、溝にすぅーっと消えて行きました。



月もだいぶ高く天に登っていました。


今度は1台の車が椿の木の辺りの道路に止まりました。人が1人、車から降りて、お礼を言いうと、帰って行きました。車もいなくなりました。


そして、道路を見るとそこには、黒猫が一匹座っていました。体の大きい黒猫でした。黒猫はこちらを見たり 低い姿勢になり寝そべったりしていました。月の光にゆらゆらと揺れてゆうゆうと身体を動かしています。


けれども、ちっともその場所から動こうとしません。

おかしいな?どうしたんだろう。

そんな風に思って、私とファイトは階段を降りて黒猫に近づいていきました。すると黒猫は、だんだん地面に、ペッタリとくっついて行きました。



目を凝らしてよくよく見ると、そこに黒猫は、始めからいなかったのです!


その場所にはマンホールの蓋がありました。確かに、黒猫がいたのです。その姿があったはずでした。

月は天頂にあり、マンホールの真上をゆらゆらと妖しい光で照らしていたのでした。