こんにちは、個別指導Wam香川鶴市校教室長の内海章雄です。

 

先週、高松市内の中学校では2学期の中間テストが実施されました。塾生たちにとっても夏休みを挟んで暫くぶりの定期テストでしたが、教室では特に中1の生徒から「英語のリスニングで…」「理科のあの問題って…」など、単に「できた・できなかった」、「難しかった・簡単だった」という抽象的ではない感想が飛び交っていて、そういった会話から彼らのテストや学習に対する向き合い方に変化を感じることができました。

 

県内のほとんどの中学校では3学期制をとっていますから、今回の2学期中間テストを含め、通常年に5回の定期テストがあります。定期テストの結果はいわゆる「内申点」に直結する重要な要素となるものですから、昔から中学・高校で当然の如く行われてきた試験なのですが、近年、全国の公立中学校ではこの「定期テスト」のあり方を見直す動きが広がっています。

 

 

2018年に東京都のある公立中学校で定期テストを廃止した、というニュースは当時見て衝撃を受けた記憶はありますが、「公立で変わった取り組みを始めた学校があるんだな」という、どこか別世界のできごとのようなとらえ方でしかありませんでした。

そこから3年が経過し、石川県金沢市、静岡県沼津市、兵庫県丹波市、福岡県須恵町の公立中学で定期テストが廃止または減らされ、さらに今年の6月に中国新聞が調査したところによると、広島市立の全63中学校のうちすでに定期テストが廃止されているのは2020年度に1校、21年度は3校にのぼるそうです。

 

文科省(国)が主導する教育改革とは違い一気にということではないにせよ、私立ではなく公立の中学で全国的にじわじわと進んでいる印象の「定期テスト廃止」の流れ。なぜ今このような動きが起こっているのでしょうか?

 

先駆けとなった東京都千代田区立麹町中学校の当時の校長・工藤勇一氏の改革は書籍にもなっていますが定期テストの廃止はその改革のうちの一つ。「現状のテストは、教員が生徒を評価しやすくするための仕組みになっていないか?」という問題提起のもと生徒たちの自立を促し、定期テストの代わりに単元テストを適宜実施して学習効果を高めたといいます。

 

定期テスト廃止のメリットとしては、後続の中学校においても主に

① 「詰め込み型ではない勉強の習慣化」

② 「単元ごとのテストによる苦手箇所の明確化」

③ 「思考力を問う課題の実践による能力の向上」

の3点を挙げています。

 

 

しかしここで疑問が残るのは、「定期テスト」の代わりに取り入れられている「単元テスト」の内容。「思考力を問うレポート」形式のもの、としている学校が多いようですが、どのような内容なのかが気になるところですよね。単元ごとに教科担当の先生が用意するのだと思いますが、定期テストと違って回数が多くなりそうですしテーマさえ決まれば問題作成にかける時間は従来よりも減りそうですが、採点・評価の基準がかなり難しい気がします。

 

単なる知識を問うテストとは違うようですから、小学校の単元テストとは全くの別物なのでしょう。しかし、本当に自ら思考し準備して「単元テスト」に臨む生徒もいれば、「〇〇ペディア」などの情報を詰め込んだり切り貼りしてくる生徒がいるかもしれません。学習習慣の定着や学力の向上はもちろん大切なのですが、生徒や保護者にとっての一番の関心は正確で平等な評価、特に通知表・内申にどう反映されるのか、という部分ではないでしょうか。

 

また、苦手箇所の明確化をするためにはある程度知識を問う問題も必要ですし、「テスト」の呼び名こそあれ、順位が出ないとか狭い範囲で回数が多くなることによりその存在が軽視されないか、入試を含む広範囲の試験に対応できるかどうかという事も問題になります。

 

そもそも工藤勇一氏が校長として赴任し改革をおこなった麹町中学校の新入生の大半は第1志望の私立や国立の受験に失敗した子どもたちとのことで、ある程度の基礎学力を持っていたと考えられます。高校はともかく受験を経験したことのない、さまざまな学力レベルの生徒が存在する一般的な公立中学校で同様の仕組みを取り入れた場合、さらなる学力格差が生まれないかとう懸念も出てくるでしょう。

 

 

定期テスト廃止論については今後も賛成・反対含めさまざまな議論が出てくることでしょう。ただ前述したとおり、すでに採用されている学校に通う生徒の学力層や廃止されたテストの代わりにどのような取り組みがなされ、どのように評価されているのか、定期テスト廃止前後での進学状況がどう変化したかなどの情報収集と分析も必要になると思います。

 

もし香川県内のお子さんが通う中学校で「来年度から定期テストを廃止します」という通知がされたら、保護者の皆さんはどう感じてお子さんに何と声を掛けるでしょうか。学校教育は今大きな変革期にありますが、私は今後も変化の先に求められるものを見据えて日々学習に取り組むことの大切さは普遍であると、塾生たちに言い続けていきたいと考えています。

 

 

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