前回,戦争映画「大日本帝国」を評価する点として“B級,C級戦犯”に焦点を当てたとこ,と記述しました.この国では(おそらく)半永久的に靖国参拝問題が解決しないので,A級戦犯という言葉は毎年,夏の風物詩のように一時的に話題になるでしょうが,B級とC級戦犯という言葉を耳にする機会はほとんど皆無でしょう.でも,B級,C級戦犯として処刑された日本兵の子孫の方は,厳然たる事実としてこれからも存在し続けるのです.一体,ABC級戦犯って何なのか程度は知っておきたいものです.
と,偉そうなプロローグから始まりましたが,自分でも異常だなと思う程の戦記物オタクである昭和おやじは小学生の頃,“A級戦犯”を“永久戦犯”だと思っていました.ちゃんと“A級”って書いてあったはずなのにね.中学生の頃は,A,B,C級とは,軍人の階級別の罪状だと思っていました.元帥とか大将みたいな将軍連中がA級,大佐とか中佐みたいなのがB級,少尉とか兵隊達がC級ってな感じでね.でも正解はというと,
A級:平和に対する罪 を犯した者
B級:通常の戦争犯罪 を犯した者
C級:人道に対する罪 を犯した者
なんですねー.なお,B級とC級は一緒くたにされてBC級戦犯とされることが多いのですが,A級を別にすると日本の被告はB級で起訴されており,C級はナチスドイツの犯罪を対象としております.
で,B級が扱う“通常の戦争犯罪”とは,「ジュネーブ条約」とか「ハーグ陸戦条約」のような戦時国際法で禁じた行為(捕虜の虐待禁止とか,毒ガスのような非人道的兵器の使用禁止)に反する行為のことです.まぁ言いたいことは多々ありますが,とりあえずB級については,罪を裁くための法律は既に存在していました.
しかし,A級の“平和に対する罪”とかC級の“人道に対する罪”とは一体なんぞや.そんなのを裁く法律は第二次大戦勃発当時に存在しておらず,敗戦国の軍人を裁くために急遽作った罪状です.つまり,犯罪発生後に法を作って適用したのであり,事後法の禁止(専門用語では“法の不遡及”って言うらしいですよ)に抵触しているのです.もっと別の言い方をすると,後出しジャンケンをしているのですよ(こんな例えでイイのかな?).
では,B級で罪を問われたのはどのような人か.“マレーの虎”山下奉文大将のような高級軍人も一部にはおりましたが,その多くは“私は貝になりたい(これも昭和だねぇ)”に代表されるような下級将兵達です.
小学生の時にテレビで見ました.当時はあまり理解できませんでした.
好き好んでB級犯罪を実行した人がどれほどいたのか,命令されてやむなく,という人が大部分であったに違いない(想像ですが,ここは,あえて断言).つまり「靖国参拝問題」とは,兵に降伏を許さず死を強要した東條英機のような戦争指導者達(A級戦犯)と戦争指導者達から死を強要されて最前線で戦った下級将兵達(B級戦犯)が,靖国神社で同等に扱われていることなのですよ.そこに何の疑問も持たず,「国のために命を捧げた方達に・・・」等と陳腐な理由を付けて恒例行事をこなすかのように靖国参拝を繰り返す政治家達を“心底許せん”,と戦記物オタクの昭和おやじは常々想うのです.
アホな政治家ばかりだと,歴史って無力だね.
映画 大日本帝国,巣鴨刑務所で家族に面会する東條英機(丹波哲郎さん)↓
敵国に逮捕されて裁かれる唯一の最高司令官です
海軍の山本五十六は空戦で殺されるし,イヤになるねぇ
映画 大日本帝国,フィリピンで処刑される海軍パイロット(篠田三郎さん)↓
映画の出来事だけど,実際にこんなB級戦犯の人が多くいたのです
映画“大日本帝国”の懐古から,あらぬ方向に話が進んでしまいました.靖国問題が解決しない限り(絶対に解決しないね),我が日本国では昭和の足かせが永遠に付きまとうであろうという予感がします.