養育費を承諾した私は


ここで力尽きた。





早く終わらせたい。


早く帰りたい。


早く離婚したい。




焦ってはダメだと分かっていながら


どうしても目の前の出来事から早く解放されたかった。







あとは阿部さんに任せよう。




その為に阿部さんは居るんだから。





戦闘意識を失った私は、
椅子の背もたれに勢いよくもたれた。






ギシッ!


と音を立てた、古いパイプ椅子。







「奥様はご主人の提案を受けます。


成立調書の内容をご主人に決めて頂けますか?


内容をこちらで確認致します。」







調書は、この調停で決めた事柄を正式な書類として残すこと。




調書の内容から反した行動が行われた場合
命令や強制執行の措置が取れるようになる。






阿部さんは

自分で決めさせることによって


後々、2転3転することを避けようと考えたようだった






養育費の金額、


親権を母親とし、


面会交流は月に1度、




大まかな記載内容を伝え


夫に調書として残す記載内容を託した。






事前に記入していた離婚届を調停員に渡し

署名、捺印するようお願いした。






私の目標であった



「親権と養育費」




これが私の決断で決まったことにより


阿部さんの対応は早かった。





私は夫に対する苛立ちで

涙が止まらない。




愛情のない人間から養育費を貰うことさえ


自分が嫌な人間になっていく気がして悔しかった。




子供のために気持ちよく決めて欲しかった



子供のために気持ちよく受け取りたかった。






イヤイヤ出される養育費は
私は死んだお金だと思った。







調停の中、言葉数少なく同席していた女性調停員は



「奥さま、、
立場上、個人的な意見は申し上げられませんが

大丈夫ですよ。

明るい未来を、歩んでください。

応援していますから。



これからご主人にお伝えして、
問題なければ調書作成に移ります。
調書内容に意義があれば、遠慮なく仰ってください。」







声を殺して泣く私を不憫に思ったのか



言葉に詰りながら声をかけてくれた。




そんな言葉は私に1ミリも響かない。




どうか夫に不幸あれ。



一生つまらない人生を歩みますように。



どうか、変わらないで。



私があなたを生き殺しにしてあげる。





あなたは黙って3万円も、払い続ければいい。