突然の連絡があったその週末、朝の10時頃、玄関からガチャガチャと音がした。

 




鍵を開けた音だった。

 

 

 



 

(夫が来た。)

 

 

 

 



 

 

 

すぐに察知した。



 

途端に動機が止まらなくなった。

 


体が動かない。

 



ドアが開くが、チェーンをかけていたから、中には入ってこられない。

 

 



心臓が飛び出しそう。息が荒くなる。

 

 

 

インターフォンが鳴った。

 


振り返ってモニターを見ると夫が映っている。

 


どうしたらいいのか分からない、会いたくない。声も聴きたくない。吐きそう。

 

 


すぐに私のケータイが鳴った。夫から電話だった。発狂しそう。

 


 

 

体が動かない   汗がながれる 

 

 






2,3回電話が鳴り終えると、リビングのカーテンの向こうに人影が横切るのが見えた。

 

 




 

 

 

(勝手口から入ってくる。)

 

 

 


 

そう予感した私は子供を抱き上げて走って二階に上がった。

 

 





心臓がうるさい。心臓がドキンとなるたびに、体がピクリと反応する。

 

 

予感した通り、夫が勝手口から入ってきたようだった。

 

 



 

息を殺して、夫の足音に耳を澄ませる。

 



 

タイミング悪く、子供が声を出して笑った。

 

 



私の荒い鼻息が、おもしろくなったみたい。

 



 

大きな息を吐くと、笑い袋のように笑う我が子。

 

 




息が子供にかからないように、抱き寄せた。

 

 





目を閉じて、呼吸を整えようとしたとき、トントントンと階段を上がってくる音がした。

 





もう隠れるところがない。

 





近くにあった本を取って、読むのに集中しているフリをした。

 






汗が止まらない、はきそう。ドキドキする。もう何が何だかわからなかった。

 



 

 

夫は私と子供のいる寝室に入ってきた。

 



 

 

「あぁ、起きてたんか。鍵閉まってたで。電話もしたんやけどな。」

 





 

 

「、、、そう。気が付かなかった。」

 

 

 




 

読んでもない本から目が離せない。

 









夫は、横になって本を開いている私の隣に座った。

 

 





 

夫の服が触れた瞬間、息が吸えなくなった。