何も理解できなかった。
何も…。
いつしか王子は動けなくなっていた。
なにもみえない、暗闇の中。
どの位の日々が過ぎたのだろうか。
…腹が減った。
何日も何も口にしていない。
一滴の水さえここにははじめからなかった。
両拳の皮膚は破れ、血が固まっていた。
口びるが割れている。
体の心から乾ききっている。
しかし王子は一言も言わなかった。
助けてほしいと。
部屋にあった唯一のもの。
この四角い箱は便器だった。
やっと王子は理解した。
ここが牢獄である事に。
自分が囚われの身になった事に。
ちくしょう!!
父はオレを売ったのか?
何のために??
何のためにだ!
それとも何か…考えがあったのか?
わかっているのは、悔しい。
ただそれだけだ。
排泄だけの犬以下の暮らし。
何のために?
何のために生きているのか?
それでも。
ぼんやり開いている瞳の奥には、暗く炎が燃えている。
唇を噛み切る。
血が流れる。
声に出せない怒りが、鮮血となって、滴り落ちる。
いま、王子は自分の血液をすすって生きていた。
しかし、激しすぎる空腹で、全く動けない。
…何より彼の王子としてのプライドが傷ついた。
もう、小便さえ、出る気配も、ない。
意識が遠くなる。
ドアの外で、声がした。
ベジータの耳がぴくりと動く。
ロックを解除するらしい音がした。
ギィ。
扉がゆっくり開かれた。
溜まりに溜まったほこりを巻き上げて
何者かがやってきた。
「おや?…いきてやがる」
足音がちかづき王子の頭のところに声の主は止まった。
ぐいっと王子の髪を引張り顔をもちあげる。
生気のない小さい顔が血だらけになっていた。
「サイヤ人てのは所詮、サル野郎だが…丈夫だねえ。
これだけがとりえか」
聞き覚えのない声だった。
その男は、ベジータの髪をわしづかみにし、
体を宙にぶら下げた。
王子の体はだらんと伸びて、ゆれた。
そのとき。
ベジータの目が開いた。
「くそったれが…」
王子はそう言い放つと男の顔につばを吐いた。
突然の事だった。
「なんだ、こいつ!」
男は怒りをあらわにし、
ベジータの髪をつかんだまま、体を壁に打ち付けた。
力いっぱい。
嫌な音がした。
バッと鮮血が広がり、王子の額は大きくわれた。
壁に赤い染みが飛び散った。
「このくそガキがっ!!」
力いっぱい、踏みにじる。
頭を、顔を。
男の怒りは収まらない。
「まだわかっちゃいねえ。
サル野郎の命なんか、この指ひとつでつぶしてやる!」
男の片腕が鈍く輝く出す。
「…もうやめておけ」
別の声がした。
その声を聴いた男はベジータから手を離した。
ベジータはぼとり、と床に落ちた。
「ビスナ・・・様」
「冗談もほどほどにしておけ。
こいつはもう使い道が決まっているんだ。」
「す、すまねえ。
つい腹ががたっちまってよ。
殺しゃしねえよ。」
ベジータの体がピクリ、と動く。
「…ほお。
たいしたやつだ…ガキの癖に。
まだうごけるのか。」
ベジータをいたぶっていた男は、慌てて答えた。
「…どうも、
普通じゃないんですよビスナ様。
これだけ長いこと何も食わずに閉じ込めておいたら、
普通、おかしくなるか死んでるんですが、
この子猿は正気だ。
…これじゃあ、洗脳にならないです。」
「ふむ。
肉体的、精神的にもっと追い詰めて、人格を破壊する。
弱ったところで次のプログラムを刷り込む…、
そうでないと従順な戦士にはならん。
こいつには徹底的にやらねばならないのか?」
ビスナは、足元に転がる王子を蹴飛ばした。
まだほんの子供だ。
幼すぎる。
なぜフリーザはこんな子供を?
…こいつをやるのか。
こんなガキを。
一瞬ビスナの瞳が曇った。
しかし命令にしたがうのが兵士の勤めである。
当たり前のことだった。
「仕方ない、歓迎会を準備しろ。」
王子を痛めつけていた男の顔色が変わった。
「歓迎会ですか?」
「仕方あるまい」
歓迎会をするのか?
こんなガキに。
自分のしたことも忘れて男はベジータを見た。
…やりたくねえな。
男は黙ってその小さい体を起こそうとした。
しかし。
その手を跳ね除けて、
ベジータ王子は力を振り絞って立ち上がった。
目に鮮血が入ってあけていられない。
激しく腹が減り、のども焼け付いている。
何より何度も壁にたたきつけられて、体中がぎしぎし痛む。
「おまえ歩けるのか」
「…当たり前だ。
汚い手でオレに触るな。」
ベジータは、自分で立って、自分の足で歩み始めた。
足元に音を立ててレバーのような血の塊が落ちた。
先を行くビスナは思わず立ち止まって振り返り彼を見た。
何という子供なのか…!
一瞬ビスナに哀れむような感情が湧いた。
…しかし
やらねばならない。
ここはフリーザ軍なのだから…。
王子の戦闘服はすでに真っ赤に染まっていた。
乾いた血が黒く変色しぱらぱらとはがれて落ちる。
全身から、新しい血の臭いをさせて
それでもベジータはたっていた。
サイヤ人の王子らしく。
堂々と。
その血でふさがれた瞳はこびることを知らない。
ベジータは大きな、でもやはり何も置いてない部屋に通された。
ぐらり、よろめいて壁に寄りかかると
グレーの冷たい壁にべったり血の跡がついた。
…なぜ自分がこういう目にあっているのか。
それは考えないことにした。
彼の想いはただひとつ。
無様な真似だけはしてはならない!
たとえこのまま死ぬとしても
サイヤ人の王族らしく
気高く散っていこうと。
何も…。
いつしか王子は動けなくなっていた。
なにもみえない、暗闇の中。
どの位の日々が過ぎたのだろうか。
…腹が減った。
何日も何も口にしていない。
一滴の水さえここにははじめからなかった。
両拳の皮膚は破れ、血が固まっていた。
口びるが割れている。
体の心から乾ききっている。
しかし王子は一言も言わなかった。
助けてほしいと。
部屋にあった唯一のもの。
この四角い箱は便器だった。
やっと王子は理解した。
ここが牢獄である事に。
自分が囚われの身になった事に。
ちくしょう!!
父はオレを売ったのか?
何のために??
何のためにだ!
それとも何か…考えがあったのか?
わかっているのは、悔しい。
ただそれだけだ。
排泄だけの犬以下の暮らし。
何のために?
何のために生きているのか?
それでも。
ぼんやり開いている瞳の奥には、暗く炎が燃えている。
唇を噛み切る。
血が流れる。
声に出せない怒りが、鮮血となって、滴り落ちる。
いま、王子は自分の血液をすすって生きていた。
しかし、激しすぎる空腹で、全く動けない。
…何より彼の王子としてのプライドが傷ついた。
もう、小便さえ、出る気配も、ない。
意識が遠くなる。
ドアの外で、声がした。
ベジータの耳がぴくりと動く。
ロックを解除するらしい音がした。
ギィ。
扉がゆっくり開かれた。
溜まりに溜まったほこりを巻き上げて
何者かがやってきた。
「おや?…いきてやがる」
足音がちかづき王子の頭のところに声の主は止まった。
ぐいっと王子の髪を引張り顔をもちあげる。
生気のない小さい顔が血だらけになっていた。
「サイヤ人てのは所詮、サル野郎だが…丈夫だねえ。
これだけがとりえか」
聞き覚えのない声だった。
その男は、ベジータの髪をわしづかみにし、
体を宙にぶら下げた。
王子の体はだらんと伸びて、ゆれた。
そのとき。
ベジータの目が開いた。
「くそったれが…」
王子はそう言い放つと男の顔につばを吐いた。
突然の事だった。
「なんだ、こいつ!」
男は怒りをあらわにし、
ベジータの髪をつかんだまま、体を壁に打ち付けた。
力いっぱい。
嫌な音がした。
バッと鮮血が広がり、王子の額は大きくわれた。
壁に赤い染みが飛び散った。
「このくそガキがっ!!」
力いっぱい、踏みにじる。
頭を、顔を。
男の怒りは収まらない。
「まだわかっちゃいねえ。
サル野郎の命なんか、この指ひとつでつぶしてやる!」
男の片腕が鈍く輝く出す。
「…もうやめておけ」
別の声がした。
その声を聴いた男はベジータから手を離した。
ベジータはぼとり、と床に落ちた。
「ビスナ・・・様」
「冗談もほどほどにしておけ。
こいつはもう使い道が決まっているんだ。」
「す、すまねえ。
つい腹ががたっちまってよ。
殺しゃしねえよ。」
ベジータの体がピクリ、と動く。
「…ほお。
たいしたやつだ…ガキの癖に。
まだうごけるのか。」
ベジータをいたぶっていた男は、慌てて答えた。
「…どうも、
普通じゃないんですよビスナ様。
これだけ長いこと何も食わずに閉じ込めておいたら、
普通、おかしくなるか死んでるんですが、
この子猿は正気だ。
…これじゃあ、洗脳にならないです。」
「ふむ。
肉体的、精神的にもっと追い詰めて、人格を破壊する。
弱ったところで次のプログラムを刷り込む…、
そうでないと従順な戦士にはならん。
こいつには徹底的にやらねばならないのか?」
ビスナは、足元に転がる王子を蹴飛ばした。
まだほんの子供だ。
幼すぎる。
なぜフリーザはこんな子供を?
…こいつをやるのか。
こんなガキを。
一瞬ビスナの瞳が曇った。
しかし命令にしたがうのが兵士の勤めである。
当たり前のことだった。
「仕方ない、歓迎会を準備しろ。」
王子を痛めつけていた男の顔色が変わった。
「歓迎会ですか?」
「仕方あるまい」
歓迎会をするのか?
こんなガキに。
自分のしたことも忘れて男はベジータを見た。
…やりたくねえな。
男は黙ってその小さい体を起こそうとした。
しかし。
その手を跳ね除けて、
ベジータ王子は力を振り絞って立ち上がった。
目に鮮血が入ってあけていられない。
激しく腹が減り、のども焼け付いている。
何より何度も壁にたたきつけられて、体中がぎしぎし痛む。
「おまえ歩けるのか」
「…当たり前だ。
汚い手でオレに触るな。」
ベジータは、自分で立って、自分の足で歩み始めた。
足元に音を立ててレバーのような血の塊が落ちた。
先を行くビスナは思わず立ち止まって振り返り彼を見た。
何という子供なのか…!
一瞬ビスナに哀れむような感情が湧いた。
…しかし
やらねばならない。
ここはフリーザ軍なのだから…。
王子の戦闘服はすでに真っ赤に染まっていた。
乾いた血が黒く変色しぱらぱらとはがれて落ちる。
全身から、新しい血の臭いをさせて
それでもベジータはたっていた。
サイヤ人の王子らしく。
堂々と。
その血でふさがれた瞳はこびることを知らない。
ベジータは大きな、でもやはり何も置いてない部屋に通された。
ぐらり、よろめいて壁に寄りかかると
グレーの冷たい壁にべったり血の跡がついた。
…なぜ自分がこういう目にあっているのか。
それは考えないことにした。
彼の想いはただひとつ。
無様な真似だけはしてはならない!
たとえこのまま死ぬとしても
サイヤ人の王族らしく
気高く散っていこうと。