
何も残っていなかった。
本当に何も。
トランクスに言葉はなかった。
真の前に広がる光景は
一面焼けただれた
荒れ放題の土地。
まさに地獄の様相だったから。
「信じられない・・・」
それだけいうのが精一杯だった。
なぜここまで荒らす必要があるのか?
こんなに徹底的に?
生き物の気配など感じない。
トランクスは手足が冷たくなるのを感じた。
指先から血が引いてどんどん感覚がなくなっていく。
唇が乾いて
どうしても言葉が出なかった。
もちろん大体の話は聞いていた。
テレビでも映像は見た。
新聞でも読んだ。
それでも…。
それでも体が震えた。
トランクスの手から力がぬける。
持ってきた菓子袋が手から落ち、
暗い穴に音も立てずに吸い込まれていった。
その場所にはスタジアムが4個は入ると思われるほどの
大きな暗い穴が口を開けていた。
底は深くて何も見えない。
そしてその表面の土は真っ黒に焼かれていた。
草の一本も残っていなかった。
わずかに残った鉄筋の建物。
壁の部分はすべて焼け落ち骨の部分は溶けて崩れていた。
思うが侭に破壊した後
面白半分で放火したのだろう。
あの2人が。
その日退院の決まったトランクスは
こっそり病院をそっと抜け出したのであった。
そして迷わずこの場所に向かった。
一人でこの場所を訪れたかったのだ。
その現場を見たとき自分がどう反応するかは判らなかった。
でも多分自分は取り乱すだろう。
それはわかっていた。
母親にその乱れた姿を見られたくなかったのもある。
トランクスは母親が買物にでたのを見計らって
窓から外へ飛び出した。
手にいくつかの菓子袋を持って。
菓子袋。
それはやはり
トランクスのかすかな希望だったのだ。
自分が倒れていた場所にはっきりとした記憶はなかった。
が、ブルマが救急隊員に確認をとってくれた。
それがこの場所のはずだった。
緑の草のびっしり生えた空き地だった気がする。
青い草の香りがしていた。
そしてここにたくさんの子ども達がいたはずだった。
うっすら覚えている。
あの子供たちの顔を。
力尽きた自分を心配していた小さな顔が
たくさんあったはずなのだ。
「痛くても泣かないでね。」
あの女の子はどうしたのだろう?
髪の長い黒い瞳の少女は。
トランクスはきびすを返す。
西の都の中央部に戻るのだ。
トランクスは少女達の手がかりを知りたくて方々歩き
聞きまわった。
が誰も詳しいことを知らなかった。
「わからないよ。」
「あっという間だったからなあ。」
トランクスは混乱した。
どうして誰も知らないんだろう??
唇をかんだ。
向かったのは警察署。
それで西の都の警察署で説明を求めたのだ。
そこで彼は理解した。
地区そのものが消えたことを。
なにもかも…消えていたのだった。
学校も
住宅地も
関係するもの
すべて。
みんないなくなったのだ、
当時の事を直接知るものたちが。
何もない。
誰もいない。
みんな死んでしまったのか?
あの小さな子ども達は!
めまいがした。
トランクスは軽く頭を下げ警察署を出ると
またもとの場所におりかえし戻った。
唇が小さく震えた。
警察の中では自分を抑えているつもりであった。
それでも時折体から火花が飛び出した。
トランクスの中にエネルギーが溜まっていく。
それは熱いうねりとなって
彼の全身を駆け抜けようとする。
耐えられなかった。
痛かったろう
怖かっただろう
君達は…
トランクスは飛んだ。
脂汗がにじみ出て
叫びたい衝動で胸が苦しい。
人目に付かないところまでくると
トランクスの身体は音を立てて一気に超化した。
「うわあああああああああああっ!!!!!!!!」
もう抑え切れなかった。
刃物のように髪が逆立ち天をつく。
透明なブルーグリーンの瞳が冷たく輝きだした。
体中から溢れる気が暴走しそうになる。
自分がどうなってしまうのか見当がつかなかった。
空に向かってトランクスは気弾を発する。
何本も何本も。
勿論そんなことで彼の暴走がおさまるはずがなかった。
彼の体は怒りをぶつける対象を求めていた。
トランクスは地面に手をつくと突然頭を地表にうちつけ始めた。
鈍い音があたりに響き渡る。
何度も何度も繰り返す。
繰り返す。
いくらぶつけてもぶつけても
トランクスの気はおさまらなかった。
自分が許せなかった。
子供たちに助けられながら
子供たちを見殺しにした自分。
弱い自分が許せなかったのだ。
額がわれ血が流れても
トランクスは自分を責め続けたのである。
流れる血液が目に入る。
脈打つ音が頭に響く。
トランクスの目の前が赤く染まる。
見たことのない世界が広がった。
トランクスの
深層に突き刺さるような
赤い世界。
彼は知らない。
これが血のビジョンであるということを。
サイヤ人だけに見える血に飢えた戦士の証であることを。
彼の心に明確な殺意が始めて芽生えたとき
彼は目覚めたのだ。
サイヤ人の戦士として。
本当のサイヤ人の生き残りとして。
「殺してやる。
殺してやるぞ。
人造人間は俺がこの手で殺してやる!!」
光の柱後半に続きます。span>