
イラストkei さん
満天に輝くスターダスト。
戦闘服姿のベジータはふと立ち止まる。
地球の夜は美しい。
どこまでも黒く透き通っていて星の輝きがぬれるように瞬いている。
この透明感は今までベジータが知っているどんな星にも無かった。
天を仰ぎ見るベジータ。
この平和な美しい星で
いま自分が身にまとっている戦闘服がどれだけ不似合いな物なのか?
それはベジータだって気づいてはいる。
自分のフリーザ軍での数々の行いが
ここでは全く無かったことのようにさえ思うことがある。
しかし。
忘れられるわけが無い。
自分の過去を否定することは
いまの自分を否定することだ。
何故だか胸がしめつけられる。
ベジータが地球にきてもうどのくらいになるだろうか。
かつては宇宙を震撼させた最凶の戦士ベジータ。
一度失ったその命をドラゴンボールに救われ
今この星に生きながらえている。
欲望のままに破壊と殺戮を重ね今まで生きてきた彼。
白いその手袋を真っ赤に染め続けて
彼は今まで生きてきた。
ベジータの経験した闇はもっともっと黒い夜。
足元さえ確認できないよどんだ深い闇。
生き物の存在しない
瓦礫と砂塵だけの冷たい世界。
そしてそれが自分の生きて滅びる世界だと思っていた。
ベジータは自分の手のひらを見る。
この手で
自分はどれだけの命を奪ってきたのだろう。
何人も何人もの
数え切れないほどの人生を
この手で握りつぶしてきたのだろう。
白い手袋は真っ赤な血をすって
ベジータに問い掛けつづける。
サイヤ人の呪われた王子、ベジータよ
お前にはもう帰るところは無い
お前にはもう生きていく目的も無い。
なのにお前はどうして生きているのか?
お前に生きる価値があるのだろうか?
見ろ、
お前の手のひらを。
お前は自分の手を見つめることが出来るのか?
その穢れた手のひらでお前は何をしようとするのか?
認めろ
自分の過去を。
手袋を通して染み付いた赤い血のにおいのするお前の手のひらを。
おまえは
それでも生きていけるのか?
何のために?
何をするために?
ベジータは唇をかみ締めた。

イラストkei さん
この星は平和すぎる。
俺の存在を否定し続ける。
俺は戦ってこそ俺なんだ。
わかるか?
なあ、カカロット。
今日もカプセルコーポレーションに帰る気にはなれなかった。
やわらかいベッド、暖かい食事。
かえって孤独感が深まるのだ。
自分のいた世界を、自分自身を否定される気がするのだ。
ベジータは岩陰に腰を下ろす。
そしてそのまま岩に背中を預けて目を閉じた。
冷たく堅い岩石の感触が
ベジータの心を和ませる。
・・・そうだ
俺は
何もいらないんだ
誰にもかかわらず
好き勝手に生きていく
かまわれるなんてごめんだ
ふとベジータの脳裏に浮かぶ
透明な瞳
それは
誰のものでもないブルマの面影。
ベジータは、はっと目を開く。
不機嫌な表情を浮かべたベジータ。
思わず舌を鳴らす。
何でこんなやつの顔が・・・
自分の感情を理解できないベジータは
何度もこぶしを握りなおし
眠れない夜を今日も過ごす。
