2021-22 AUTUMN&WINTER 【MAGIC】 | ”wallflower by jun okamoto”

”wallflower by jun okamoto”

熊本県熊本市中央区上通町3-21 wallflower by junokamoto

JUNOKAMOTO鶴屋店

 

今日は

2021-22 AUTUMN&WINTER 【MAGIC】

 

のお知らせです爆  笑

 

4/29(木)〜5/2(土)JUNOKAMOTO鶴屋店

5/3(月)〜5/4(火)wallfilwer by junokamoto

にて先行受注会を

開催いたしますトランプダイヤ

 

全てのアイテムが揃う中で

お気に入りのコーディネートをご予約していただく貴重な機会となります。 

期間中ご予約いただいたお客様には

ノベルティーをご用意しておりますトランプスペード

 

 

 
 
 
 
 
MAGIC
 
1ートランプをよく切っていちばん上のカードが何のカードか憶えてもらいます。
2ーそのカードをトランプの真ん中にさしこみます。
3ートランプの束を人差し指で何度か叩き、おまじないをかけます。
4ーいちばん上をめくると、先ほどのみてもらったカードが出てきました。
 
難易度:★☆☆☆☆
 
久しぶりにカードマジックの本を読み返してトランプを取り出した。
箱から出したトランプはあの頃のまま真冬の空気のようにピンとしていたが、何度枚数を確認してもハートのエースだけがどうしても見つからなかった。
当時を思い出しながらトランプを切り手順に合わせてやってみると多少おぼつかないところもあったけれども意外にうまくやることが出来た。
練習相手だった犬の姿を懐かしく思い出しながら何度か練習を続けた。
 
ーーー
 
あの日はもう3月だというのに珍しく雪が降っていた。
 
窓の外を眺めていると、彼の足音に続いてコーヒーの香りとゴーグドベルク変奏曲が部屋の中を満たした。
珍しく落ち着きのない彼を眺めながらコーヒーを飲んでいるとドアベルが鳴り彼が玄関に向かった。
少しの時間を置いた後、緊張した面持ちの彼が目の前に大きな花束を差し出した。
私がそれを受け取ろうとした時、彼は素早く花束をコートの中に隠した。
 
「ワン・ツー・スリー。」
 
そう言って彼がコートをめくると花束は消え、裏地いっぱいに花の模様が広がっていた。
私と犬が驚いていると今度は微笑みながら左手を背中に回し、消えたはずの花束を出して何かをつぶやいた。
 
そこで私は目を覚ました。
 
「寝てる間笑っていたわよ。」
いつも私のことをお母さんと呼ぶ女性がそう言ってベッドの角度を変え体を起こしてくれた。
「3月なのに珍しいわね。」
そう言われて窓の外を見ると、雪が降っていた。
 
ーーー
 
久しぶりに首元までボタンを留め鏡の前に立った。
白髪まじりの髪の毛を手ぐしで整えて、長めのガウンを着てポケットにトランプを入れた。
 
病院に着いて受付で名前を告げ病室を教えてもらい5階に向かった。
目の焦点もだいぶ合わなくなってきて病室の札を確認するのに戸惑ったけれども、教えてもらった病室にたどり着いた。
 
ーーー
 
ドアをノックする音に気がついて声をかけると、顔を白く塗り目に幾らかの化粧をした男性が少し緊張した面持ちで部屋の中に入ってきた。
男は会釈をして小さなラジカセのスイッチを押し、メモ帳を渡した。
 
メモ帳をめくると「magic」とだけ書かれていた。
斜めに傾いた癖のある筆跡とラジカセから流れるスローテンポなピアノの曲に懐かしさを覚え、少し頭が痛んだ。
 
テーブルをノックする音で我に戻って男を見ると心配そうな表情から笑顔に戻り手品を始めた。
手際が良いとは言えないトランプを使ったカードマジックは単純なものだったが楽しむことができた。
一通りカードマジックが終わると、メモ帳をめくるようにジェスチャーで促した。
めくってみても何も書かれてなかったので顔を上げると、男は一輪のチューリップを取り出し笑顔で私に差し出した。
私がそれを受け取ろうとそると、さっと手を引き着ていたガウンの中に花を隠した。
 
「1・2・3」
 
男が指でそう示してもう一度ガウンを開けると綺麗な黄色のチューリップは消えていた。驚いた私を悪戯っぽい表情で眺めながら、もう一度メモ帳をめくるように促した。
メモには「ありがとう。」という文字と小さな犬のイラストが描かれていた。
私は長い眠りから覚めるような感覚を覚え、急いで顔を上げた。
 
彼の姿はもうなくなっていたが、ベッドサイドには先ほどの黄色いチューリップとラジカセがそのまま置いてあり、
当時のいつも彼が流していたグレングールドのゴールドベング変奏曲が流れていた。
 
再びドアが開くと娘が入ってきた。
 
「おはよう。」
そう言って娘の名前を呼ぶと、彼女は私に抱き付き泣き出した。
 
ーーー
 
医者は驚きを隠せない表情で私と話をした。
 
周りはそれを奇跡だとか色々言いながら喜んだ。
退院し家に帰り、書斎に黄色いチューリップを飾り小さなラジカセを置いた。
私は書斎のテーブルに一つだけ鍵の付いている引き出しを開け、奥の方から一枚の白い封筒を取り出し封を開けた。
 
中にはあの日持ち出したハートのエースのトランプが1枚入っていた。