おはようございます。ワラビー社会保険労務士事務所代表の渡辺 忍です。
本日は1月5日、月曜日。
官公庁や多くの企業様にとって、今日が「仕事始め」ですね。
自衛隊でも、駐屯地司令による年頭の辞が行われ、張り詰めた空気の中で一年がスタートします。
この「ピリッとした空気」こそが、組織の背骨を正します。
さて、新連載『ミッション・コマンド入門』。
第6回目の本日は、自由を与えるがゆえに最も重要となる要素、「規律(Discipline)」と、それを担保するツール「SOP(標準作業手順)」についてお話しします。
※シミュレータ付きのWeb版はこちら。https://wallabysr.com/missionvol-6/
ミッション・コマンドは「無法地帯」ではない
「現場に任せる」「自由にやらせる」と言うと、多くの経営者がこう懸念します。
「そんなことをしたら、規律が乱れて好き勝手やり始めるのではないか?」
その懸念はもっともです。
しかし、誤解を恐れずに言えば、ミッション・コマンド型組織の方が、従来の中央集権型組織よりも「規律」は厳しくなります。
なぜなら、「自由(Freedom)」と「勝手(License)」は全く別物だからです。
自衛隊が「基本教練」を徹底する理由
自衛隊では、敬礼の角度、制服のプレス、行進の足並みといった「基本教練」を徹底的に叩き込まれます。
これは航空部隊における「編隊飛行訓練」にも通じます。
戦闘機やヘリコプターが、翼と翼が触れ合うほどの距離で密集して飛ぶ編隊飛行。
これは高度な操縦技術の錬成であると同時に、究極の「規律訓練」でもあります。
「長機(リーダー)の動きに、僚機(ウィングマン)は絶対に従う」。
この鉄の掟を守り抜く厳格さがあるからこそ、空戦という極限の自由機動の中でも、お互いを信頼して背中を預けることができるのです。
「些細なルールすら守れない人間に、命に関わる自由な判断など任せられない」
これが、自衛隊における人材育成の鉄則です。
最強のガードレール「SOP」の機能
さらに、自衛隊にはSOP(Standard Operating Procedures:標準作業手順)という、もう一つの規律があります。
これは単なるマニュアルではありません。組織が高速で動くための「ガードレール」です。
ミッション・コマンドにおいて、SOPは以下の重要な役割を果たします。
1. 「やってはいけないこと」を明確にする
SOPは「正解の手順」だけでなく、「これ以上は危険」「ここからは許可が必要」という「行動の限界線」を示します。
このガードレールがあるからこそ、部下は「この範囲内なら好きに暴れていい(Freedom of Action)」と安心してアクセルを踏み込めます。
2. 脳のメモリを「節約」する
戦闘や災害派遣といった極限状態(VUCA環境)では、人間の認知能力は低下します。
ルーチンワーク(通信手順や基本動作)をSOPで自動化しておくことで、指揮官の脳のメモリを「想定外の事態への対処」という高度な判断のために温存することができます。
3. 即席チームの共通言語
SOPが共有されていれば、初対面のメンバー同士でも「SOP通りに」の一言で即座に連携が取れます。これこそが組織の機動力の源泉です。
経営における「ガードレール」の設置
ビジネスにおいて、部下に自由(サンドボックス)を与える時、同時にこの「SOP(絶対に超えてはいけない一線)」を明確にする必要があります。
【守るべき厳格な規律(ガードレール)】
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法令遵守(コンプライアンス): ここを破れば会社が死ぬ。
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安全規定: ここを破れば人が死ぬ。
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報告のルール: 悪い情報ほど早く上げる(情報の隠蔽は重罪)。
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経営理念(バリュー): 会社の魂に反する行動は許さない。
これら「コア」の部分については、ミリ単位のズレも許さない厳しさが必要です。
逆に言えば、このSOP(ガードレール)の内側であれば、どんなに破天荒なやり方でも構わないのです。
規律があるから、自由になれる
「規律」と「自由」は対立する概念ではありません。
「SOP(ガードレール)があるからこそ、我々は迷わずに高速で走れる」のです。
もしガードレールもセンターラインもなければ、怖くてスピードなど出せません。
SOPがない自由は、ただの「迷走」と「事故」を生みます。
新年のスタートに「規律」を点検する
仕事始めの今日、ぜひ社内の「規律」を点検してみてください。
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「挨拶」や「時間厳守」といった当たり前のことが緩んでいませんか?
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「やってはいけないこと(制限事項)」は明確になっていますか?
ミッション・コマンドを目指すなら、まずは「凡事徹底」と「SOPの構築」から。
足元がグラグラしている状態で、権限委譲という重い荷物は背負えません。
次回、第7回は、任せた後の関わり方について。
【介入】手出し無用、口出し無用? ~指揮官が介入すべき「一線」~ について解説します。
「任せたら放置」ではありません。絶妙な介入のタイミングをお伝えします。
それでは、本年も規律正しく、かつ自由に。
素晴らしい一年のスタートを切りましょう!
ご安全に!
ワラビー社会保険労務士事務所代表 渡辺 忍
