妻の声が震えた「果たせなかった約束があります」 ネパール人惨殺公判、裁判員も泣いた
2013.3.17 18:00 (3/3ページ)[衝撃事件の核心 west]

妻(手前)は夫が残した店を夫の甥(奥)とともに再開した。事件の公判では夫への思いを切々と語った=大阪市天王寺区

「求刑は軽すぎる」

 大樹被告に対する検察側の求刑は懲役18年。だが、裁判員の中には「軽すぎる」と感じる人もいた。結果、判決は求刑を上回る懲役19年。一方、美代子被告には傷害致死罪を適用し懲役9年(求刑同15年)が言い渡された。

 判決後、3人の裁判員が記者会見した。外国人に日本語を教えているという女性は「『人の命を奪って18年か』と軽く感じた」と率直な感想を口にした。

 この女性は自身の経験も踏まえ、「外国人が日本に来て生活するのは大変なこと。家族にも一生懸命仕送りしながら生きていた被害者の命を一瞬で奪ったのは罪が重い」と断じた。

 さらに、妻の意見陳述について「法廷の中では冷静でいなければと努めていたが、いたたまれない気持ちになり、涙が流れてしまった。被告人らには、遺族の直(じか)の声をもっと聞かせてもよかったのではないか」と話した。

 別の女性(24)は、妻の話を聞くうちに「自分の立場だったらと思うと、すごくつらくなった」ため、涙を止められなかったと話し、男性会社員(55)は「被告人らは謝罪してもしきれないことをやった。残された妻のことを思うと怒りがこみ上げてきた」と語った。

桜の季節になったら…

 「夫と果たせなかった約束があります」

 意見陳述の終わり、裁判長から「何か最後に言いたいことはありますか」と問われた妻は、こう切り出した。

 桜の季節になったら、一緒にバーベキューセットを持って花見に行こう-。もう決してかなうことのない夫婦の約束。それが悔しくてならない。

 かけがえのない人を失った悲しみも癒えることはない。それでも妻は、夫が残した店を再開した。法廷で夫が受けた残虐すぎる暴行の一部始終を聞くのはつらいが、「真実を知りたい」と公判にも足を運び続けた。

 事件をめぐっては、殺人罪に問われた共犯の男(22)がまだ公判中。大樹被告らの判決後、妻は「共犯者が審理中のため」として、今回の判決に対する感想は明らかにしなかった。真実を知るための戦いは終わっていない。

求刑も判決も死刑にならなかったのは大阪だから?