話題の無料通話アプリ「comm」を使ってみてわかったこと
@DIME 12月14日(金)13時49分配信

 スマートフォン向け無料通話アプリ「comm」をDeNAがリリースしたのは、2012年10月23日。あれから約1か月半が経過した。「comm」は吉高由里子さんを起用したCMを流し始めてからインストール数がうなぎのぼり。このジャンルで先行している「LINE」を脅かす存在になるかと思われていた。しかし「GooglePlay」で、12月7日現在のデータを見てみると、Android版のダウンロード数は急降下している。

■なぜ、こんなことになっているのか?

「LINE」ユーザーだった私が「comm」をインストールしたのは、リリースの直後。インストールして、まず戸惑ったのが「実名登録」だ。ヘルプには「実名でない登録名は削除する場合がある」とあり、実名で登録することが促されている。しかし、本当に実名で登録して、セキュリティーは大丈夫なのか? 外に漏れることはないのか? 提供元(ディベロッパー)が「DeNA」という著名な会社であっても、新たなアプリに実名で登録することにはさすがの私も躊躇した(※「LINE」はニックネームでの登録もOK)。そして、その不安がさらに広がったのが、友だち登録時だ。検索機能を使うと、見知らぬ人が顔写真付きで、ぞろぞろとリストアップされてくる。自分もこうやって、見知らぬ人に実名がさらされてしまうのかと思うと、怖くなった。私は、この時点で早くもアンインストールを考え始めた。

■Googleで「comm」を検索すると……

 それを裏付けるように、現在Googleで「comm」と検索すると、公式ホームページと「GooglePlay」の次に、「commが危険」というページがピックアップされるようになっている。そのほかにも「危ない」という警告を発しているページが連なっていて、どうも危険なイメージが先行する。では、本当に「comm」は危険なアプリなのだろうか? まず、私が最も不安に感じた検索機能だが、設定で「友だち検索」を「OFF」にすることで見知らぬ人のスマホに表示されることはなくなった。メールや通話、トークも友だちからしか受けられないような設定も用意されている。

 さらに「LINE」では電話帳をアップロードすると、その内容は「退会」でしか消すことができないのだが、「comm」ではリストで消したい相手を長押しすることで消すことができる。また「comm」の友だちリストは、長押しするとダイアログが表示され削除できるようになっている。「comm」はその後のバージョンアップで、安心して利用できるアプリへと改良を繰り返し「安心への取り組み」というページを用意して、その安全性をPRしている。

 しかし……。リリース直後、機械的に退会できなかったり、規約が怪しかったり、見知らぬ人に検索されたりしたために、「comm=危険」という印象が広がってしまい、そのマイナスイメージを払拭しきれていないように思う。また、機能的な面も足を引っ張った。テレビCMに合わせて紹介キャンペーンを展開していたのだが、招待されても認証番号がメールで届かないトラブルが発生し、登録できない人が続出。Twitterでも「なぜ登録できない?」というつぶやきが多数見られた。

■「comm」のプラスの要素は何か?

「comm」のウリは「高音質」。しかし、音がいいかどうかは環境や機種、それに主観も入るため、それもマイナスイメージを払しょくするほどの高評価は得られなかったようだ。「LINEとさほど変わらない」「skypeのほうが断然いい」という評価で定着しつつあるように感じる。また「LINE」にはない、アプリをインストールしていない人ともトークルームで話せる機能もプラス要因だろう。しかし、これもマイナスイメージに勝てるほどの強力な要素にはならなかった。私が1か月間、使ってみて、今、感じていることは「なぜ、実名登録にしたのだろう?」「なぜ、検索機能をつけたのだろう?」ということだ。

 メディアなどでスマホはセキュリティーが危ない、という報道を頻繁に見かけるようになり、スマホユーザーはセキュリティーに敏感になっている。ユーザーに対して「実名登録」は自らのハードルを高くしているように感じる。それなりのセキュリティー対策がなされていなければ安心できないし、実名登録するメリットが感じられなければ、必要ない。さらに「実名登録」させるなら「検索機能」はいらない。「友だちリスト」も不要。セキュリティー面も考え、自分がつながりたい相手を自分で選びたい。つまり、自分が招待する、招待を受ける相手とだけつながることができればいいのだ。

 たぶん、私同様に「LINE」ユーザーで試しに「comm」を使ってみたという人は多いと思う。しかし、「LINE」でつながっている友だちに対して「『comm』はこんなところがいいよ」と誘える要素がなかった。CMのキャッチフレーズ「commでいいじゃん」ではなく、「comm」でなくてはできない、という明確な何かがなければと、わざわざ友だちにアプリをインストールし登録してもらうには気が引ける。また、新たに無料通話アプリを試してみようと思う人にとっても、同種のアプリが多数ある中からわざわざ「危険」というイメージがあるアプリは、手を出しにくい。

■今のところ「commじゃなくて、いいじゃん。」

 出だしから、マイナスイメージが重たくなってしまった「comm」。無料通話&チャットアプリが数多くある中で、「comm」を選ばせる何かが付加されなければ、このイメージは払拭できないだろう。「モバゲー」を手掛けるDeNAだけに、このままでは終わらず「commでなくちゃダメじゃん」というCMが堂々と流れるようになると、秘かに期待しているのだが……。今後の展開に期待したい。

(文/栗山佳子)