湯河原中PTA経験者ら「津波不安」移転訴え、町側は屋上避難で理解求める/神奈川
カナロコ 9月15日(土)5時0分配信

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海に面している湯河原中学校
 津波への不安が大きいとして、海沿いに立地する湯河原町立湯河原中学校(同町吉浜)のPTA経験者らでつくるグループが同校の移転を訴えている。「安心して子どもを通わせられない」と町議会に請願書を提出。署名活動も実施し、7700人を超える署名が集まったという。これに対し町は県の新たな津波予測を基に「浸水の危険性は考えにくい」と説明、屋上への避難対策を進めるなどとして理解を求めている。

 請願書を提出したのは、湯河原中のPTA経験者らが中心の「湯河原の子どもの未来を考える会」。東日本大震災を機に、海沿いに立地する同校の安全性に疑問を持ったことなどがきっけでメンバーが集まった。請願では、早急に移転計画を立て中学校を安全な場所へ移すことなどを求めており、同会によると、趣旨に賛同する7707人から集めた署名も町議会に提出しているという。

 湯河原中はもともとは海から約500メートル離れた海抜14・7メートルの場所にあったが、校舎の耐震性不足が判明。統廃合により閉校した旧県立湯河原高校の敷地を2009年8月末から使用している。この移転により揺れに対する安心は手に入れたが、敷地は海抜7メートルですぐ外側が海岸になっており、結果的に津波という新たな不安要素が出てきた形だ。

 ただ、同校周辺は県西部地震が起きた場合に6・8メートルの最大波が8分で到達すると予想されているものの、浸水予測区域には入っていない。このため、町教育委員会などは震災以前から検討していた旧県立校施設の購入を目指す姿勢は崩しておらず、校舎屋上(海抜18・2メートル)への避難対策として、本年度中に転落防止柵などの設置工事を予定している。

 この問題は13日の9月定例会一般質問で取り上げられたが、篠原通夫教育長は「直ちに移転することは考えていない」と答弁。冨田幸宏町長も「不安の声が上がっていることは真摯(しんし)に受け止めたい」としながらも、「震災後、県との交渉を止めて予測が出るのを待っていた。防災対策を打っていくためにも、町が取得した方がよい」との認識を示している。請願は今後、二つの委員会に付託される。

 グループのメンバーは「県の想定より高い津波が押し寄せてくる可能性もある。陸側に国道が通っていることも含め、避難しにくい立地も問題」と指摘している。