―ひょっとしたら、太陽なんていらないのかもしれない。
太陽が無ければ、
地球で生き物は生きていけない。
外灯で照らされた この青い鳥 を見ていると
そう思えて仕方がありませんでした。
仕事終わりの夜は、
一秒でも早く外に出たいと思う。
大抵、仕事が終わる頃には
死んだサバのような目でデスクに座っていて、
ロッカーで素早く荷物をまとめたら、
ちょっとだけ生気を取り戻した目と
急ぎ足でエレベーターに乗って外に出る。
少しひんやり感じるくらいの空気を
思いっきり吸い込んで、息を吐き切る。
深呼吸をすると、
その日あったトラブルとか、
我慢してやったこととか、
嫌なことをリセットできる気がします。
旅行先でも、私はよく深呼吸をします。
初めて北海道に行って空港の外に出たときも、
襟裳岬に着いたときも、
一人で初めて羽田空港に着いたときも、
そうでした。
この深呼吸は「リセット」のためではなくて、
要らなくなったものを手放して、
代わりに、新しく良い空気を取り入れるため。
コンピューターのOSをバージョンアップみたいなものだと思います。
最近は仕事終わりにリセットしたつもりでも、
モヤモヤが残る。
不安を手放せないまま、
帰り道にその不安の中身を覗いてみる。
職場での自分の立場が変わり、
コロナウィルスの影響で環境が変わり、
はっきりとは言葉で表せない違和感がある。
毎年4〜5回は思い切った遠出をしていたのに、
今年はまだ1回だけ。
イラストも展示会以降は新作が出来上がってない。
残業が増えて、時間の調整が上手くいかない。
昨年はイタチを割とよく見かけていたのに、
今年は全然見つけられない。
できないことだらけ。
「2月に東京へ行けただけでも
幸せと思うべきかな」
「イラストを描く頻度と時間は増えてるし、
たまにはそんなこともあるよ」
「遅くまで働いてるんだから、
早起きできなくても仕方ないよ」
…と自分に声をかけても、
「どうだろう」
と何かを疑うような答えが返ってきます。
信号待ちの間にそんなことを考えていると
横断歩道の向こう側、
外灯の下に動く影を見つけました。
外灯に照らされたアスファルトの上に、
獲物をくわえたイソヒヨドリが一羽。
外灯のせいで色はあまり見えないはずですが、
鮮やかな「青」に目を突き刺されたようでした。
少し近づいて目を凝らすと、
背中が青で腹側は赤褐色。
立派なオスのイソヒヨドリです。
3〜4年前の同じ場所、同じ時間帯に、
イソヒヨドリを何度か見かけたことがあります。
「何で、アパートと駐車場と外灯しかないような場所で、夜遅くにこんなことやってるんだろ…もっと他の場所とかあっただろうに」
と、その時は不思議に思っていました。
その時見ていたのは恐らく若鳥で、
少しふわふわして
丸っこい体型。
人の目で見ても
動きにはムダがある。
外灯に集まる虫を獲ろうとしても
なかなか上手くいかず、
何度も追いかけては
逃げられていました。
それでも、何度も何度も繰り返して、
獲物を捕まえていたのです。
その若鳥を横断歩道の向こう側から
そっと観察するのを楽しみにしていましたが、
急に姿を見なくなりました。
それからずっと、その場所でイソヒヨドリを見かけることはありませんでした。
青いイソヒヨドリと
以前見ていた若いイソヒヨドリが
同一の個体なのかは分かりません。
ひょっとしたら同じかもしれないし、
血縁関係があるかもしれないし、
全然関係ないのかもしれません。
あの場所とあの時間を選んでいた理由も、
今なら少し分かる気がします。
障害物が少ないから見通しが利いて、
夜の外灯には沢山の虫が群がっている。
草木が鬱蒼と生茂る場所より、
日のある時間帯より、
ある意味「絶好の狩場」です。
「太陽の光がないといけない」
というのは勝手な思い込みで、
太陽が沈んだ後の方が良いと
彼らは知っていたのかもしれない。
思い込みを捨てて、
続けてやってみる。
「普通じゃない」「おかしい」と言われても、
今は満足できる結果が出てなくても、
ずっと続けていれば
現実という「形」が整っていく
ということなのかな…と思いました。
思い通りいかないことがあっても、
折れたり曲がったり形が変わっても、
実は ちょっとずつ良くなってる。
ちょっとずつだから気づいていないだけかも。
今やってることを続けてみます。
ということで…
また一回、バージョンアップができました。
次に皆さんとお会いできる際は、
さらにパワーアップしたsOnOと
sOnOのイラストをお見せできるよう
準備しておきます！
sOnO