県立医科大学(橿原市四条町)の先端医学研究機構
坪井昭夫教授(脳神経システム医科学)の研究グループが、神経細胞の中で5T4と呼ばれるたんぱく質の分子が神経回路を発達させる働きを持つことを突き止めた。
神経回路を修復し、再生医療に役立つ可能性があるという。

米国の科学雑誌ザ・ジャーナル・オブ・ニューロサイエンスの2月8日号に掲載される。
坪井教授らは、においを感じる嗅球の神経細胞を研究。
マウスを使った実験で、5T4をなくした細胞では樹状突起の枝分かれが1~2本なのに対し、5T4があると5~6本になり、さらに5T4を過剰に発現させると8本にまで増えた。
5T4を持つ細胞は限られているが、嗅球の場合は、においの刺激を与えると5T4を増やすことができることも分かった。
嗅球と海馬は、大人になってからも神経細胞が新生回路を作り続ける数少ない部位として、再生医療の分野でも注目されている。
神経細胞同士をつないで情報伝達を行う樹状突起を増やせば、機能的な神経回路が構築され、脳梗塞などで損傷した病巣部で神経回路を修復できる可能性があるという。  坪井教授らは「5T4の研究が進み、人の体で増やすことができる薬剤などが開発されれば、脳梗塞などの治療にもつながるのではないか」と話している。