トスカーナ - サン・ガルガーノ | ホタル舞う夜の空

トスカーナ - サン・ガルガーノ

前の日の夜遅くから降り出した雨は、夜中降ったり止んだりを繰り返し、
この日の午前中はまだ雨がパラついていた。

キャンプって基本的にすっごく好きなんだけど、
それでも、雨が降っている中でのキャンプ生活ほど嫌なものはない(笑)
足も服も、荷物も何から何まで濡れて、テントの中に逃げ込んでも、テントの中はしっとりと湿っている。
外が乾かない限りは中でモノが乾燥することはない。
雨が降り続けば、テントの中まで水がしみ込んでくる。

朝、まだ虚ろな意識の中で雨の音を聞きながら、もう憂うつな気分になっていた。

大体テントの中に居ると、雨の音がやけに大きく響いてきて、
まるで空がちっぽけな人間をあざ笑っているみたいだ。

そんなことをボーっと考えていたら、彼も目を覚ました。

「雨降ってるよ」
「降ってるね」
「今日何する?」
「良い質問だね」

ダラダラと10時近くまでテントに居たら、雨が小降りになり、ほとんど止んでくれた。
相変わらず空は雲で覆われていて、そのうちまた振られそうだが、
とにかく外で何かできそうだ。

「こういう天気は歩くのに最適だね」

ということで、今日のプログラムはハイキングに決定。


San Galgano/サン・ガルガーノは、シエナから南西に20kmほどのところに位置している。
その手前のMonticiano/モンティチアーノという町まで車で行き、
そこからサン・ガルガーノという朽ち果てた教会まで、約1時間半ほどのハイキングだ。

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モンティチアーノにある教会の鐘。
トスカーナでは、教会の鐘がこんな風に外から見えるように取り付けられていることが多かった。
ドイツでは教会の鐘が外から丸見えになっていることって滅多にないから不思議だった。

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教会の内部に入ると、側面の墓地へ続くドアが開いていた。
教会の内部の薄暗さと外をつないでいる、木のドアの表面に映る柔らかい光が印象的だった。

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モンティチアーノからサン・ガルガーノへと歩く途中、サン・ガルガーノのすぐ手前を流れるMerse川に掛かる橋。
こんなシンプルな木の橋にお目に掛かれるなんて、感動モノ。
ハイキングっていったって、比較的平坦だし長くもないし、歩きやすくて割とお手軽なコースなんだけど、この橋のこの構造から察するところ、歩く人は相当少ないんだろう。

たびたびドイツ人の口から出る、「イタリア人は歩かないから」という言葉の意味が分かる気がする。
実際、このコースを歩いていて見かけたのは一組のカップルだけだった。
静かで良かったけど。


木の橋を渡り、畑の中の道を抜けて、ダラダラと上り坂を登っていく。
丘の中腹で、もう一本の道にT字でぶつかると、左手の視線を遮っていた藪が終わり、突然、朽ちかけている教会が姿を現す。

劇的とも言える出現、圧倒的な大きさ、迫力ある姿

s.galgano1

これが、サン・ガルガーノ。
もともとは13世紀頃に修道院として建築されたらしいが、16世紀頃には廃墟となり、
18世紀頃に屋根が壊れてから、修理されることもなく野ざらしになっている。

まさしく、

祇園精舎の鐘の声、諸行の無常の響きあり

と言った趣があった。

s.galgano2

ハイキングコースではほとんど人っ気を感じなかったのに、
このサン・ガルガーノは観光客でごった返していた(笑)

全然知らなかったのだけど、アンドレイ・タルコフスキーというソヴィエトの映画監督の撮った「ノスタルジア」という映画のラストシーンでこの教会が使われているらしい。
是非、観てみたいと思う。

s.galgano3

丘の頂上に立つ、洗礼教会の天井