PERMANENT WAVES (40th Anniversary) | walkin' on

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アナログレコードのレビューを中心に音楽に関するトピックスを綴っていきます
 歌詞の和訳や、時にはギターの機材についても投稿します


レコード番号:B0031582-01(Mercury/Anthem) 2020年(US盤)


 ファンを喜ばせ、そして困らせるデラックス再発もの。ましてかラッシュ(RUSH)となればもう、苦悩のズンドコでございます
 そんなラッシュの名盤”PERMANENT WAVES”の40周年記念盤、購入に至るまで迷いに迷ったこのアルバムをご紹介することで、企画再発ものとの距離の測り方(?)の参考にしていただければと思います。

 

 

 

  ”PERMANENT WAVES”(以下PW)のLPについての過去の投稿はこちらを;

 入手に4年をかけたこともあり感慨もひとしおのLPでしたが、何度聴いているうちに、音程が妙にふらつくことに気づいたのです。

 

 まずいことにPWには”Jacob's Ladder””Different Strings”のように長く伸ばす音(ロングトーン)がけっこう多く、曲のコーダ(終結部)がフヨヨ~ンとふらつくのはなかなかに辛いものです。これが不良プレスというものなのかはわかりませんが、だとしたら思い入れの強いアルバムだけによけい無念がつのります…

 

 

 

 

 今年に入るとPWの40周年記念盤の発売がアナウンスされました。

 CD、LP、そしてそのふたつ+オマケ、の3種がリリースされましたが、そのうちCDについてはすでにデジタルリマスター済の”THE RUSH REMASTERS”シリーズが流通しているのでパス、LPとCDのセットもパス。となればLPかぁ…と候補を絞りました。

 

 2020年もあと数日で終わる今日になって立ち寄った新宿のタ〇ーレ〇ードのレコード売場に行ってみると、意外なことにLPと、CD+LPセットがまだ販売されていました。

 LPのほうを手に取ります。本編アルバムの他に当時のライヴを収録した2枚のLPがついて税込だと諭吉オーバー、散々迷いましたが結局購入を決めました。

 

 

40周年記念のジャケットデザイン。

風に飛ばされている新聞の見出しが

本編のジャケットの画と、ウダウダ、グチグチを意味する”BLAH BLAH BLAH”の文字が。2000年代のライヴでゲディ・リーが着用していたシャツに

とあったのを思い出した方も多いのでは。

放送局の名前、に見せかけて楽曲のタイトル”YYZ”をこっそりと配置。

 

で、

こちらが本編。

こちらのジャケット、よく見ると

諸般の事情により修正された見出しがオリジナルどおりに復活。

さらに

3つの看板に”LEE””PEART””LIFESON”。3人の結束の固さがうかがわれます。

 

 付録のブックレットの表紙には例の新聞の見出しがここにも。あんまりやり過ぎるとまた物言いがつくかもしれへんのに(・_・;)

 

 

 

 

 

 本編のLPを再生します。

 当然ながら、といっていいでしょう、先に所有していたLPのような音程のふらつきはどこにも発生せず、アレックス・ライフソンのギターがちゃんとまともに聴こえます。PWにおけるライフソンのギターにはコーラスやフェイザーと呼ばれる、音程のうねりを演出するエフェクト(効果)が加えられていることもあってロングトーンでの音程が揺れやすいのですが、このLPだと違和感なく聴けます。

 

 意外だったのはベースの歪みが浅いこと。

 アンペッグ社の真空管アンプ+フェンダー社のジャズベースとされる、グイグイブンブンとうなりを上げるオーバードライブしたベースサウンドがこの時期のリーのトレードマークだと思い込んでいただけに、丸みと重みを感じさせる浅めの歪みは思いがけない発見でした。

 

 ドラムはコンプレッション(圧縮)が軽めになったようで、人工的に押し込められていたサウンドが解放されて伸びやかに響きます。もっとも、ラッシュの音源ではプロデューサーの手法にドラムサウンドが大きく左右される印象がありますから、数作を共に創りあげたテリー・ブラウンと上手く歩調を合わせられた、ということなのかもしれません。

 

 

 

 

 1977年生まれで現在43歳のボクと同じか若い世代にとって、ラッシュの音源を新品で入手するのはCDか、最近ではデジタル配信のはずです。

 

 対してボクより上の、1983年の最初で最後の来日公演に間に合った世代の方にとって、90年代よりも前のラッシュはLPまたはカセットテープで聴いておられたものとお察しします。

 カセットテープは伸びたり磁気が落ちたりで長期にわたる鑑賞が難しいのですが、リリース時にリアルタイムで入手されたLPが今もなお手元にあり、それを聴く環境がある方は、この40周年記念盤を無理して入手しなくてもいいのでは、と思います。

 

 ボクと同じ、または若い世代の皆さんにとっては、過去の音源をデジタルではなくアナログで聴くことが何かしら特別な意味を持ちます。かく言うボクがそうなのでその気持ちはよく分かります。

 

 すでにリマスター済のCDを持っており、もしくは聴いたことがあり、それを上回る生々しい、厚みのある音で聴いてみたい、という熱い想いと、諭吉オーバーをはたいても給料日前にチ〇ンラー〇ンとおかゆで泣きながら耐え忍ばなくてもすむぐらいの余裕がある方は、流通しているうちに確保しておくことをおすすめします。

 1980年のリリースからCDへの移行までに流通したLPを探し回るより、音質の点で圧倒的に有利な盤の、未使用新品が手に入るというメリットは決して小さくはないからです。

 

 

 最後に、ラッシュというバンドに、過去作に強い思い入れがあるリスナー、ファンにとってはこの記念盤はおねだん以上の価値があります。それはバンドやマネジメントも同じであるということが、ブックレットの最後の見開きページからも感じ取れるはずです。

 

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