THE CAPTAIN AND ME | walkin' on

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アナログレコードのレビューを中心に音楽に関するトピックスを綴っていきます
 歌詞の和訳や、時にはギターの機材についても投稿します

レコード番号::P-10128W(Warner) 1976年(国内盤)

 

 思い入れの強さでは一、二をあらそうアルバムのひとつです。

 以前に投稿したカーラ・ボノフの”RESTLESS NIGHTS"と同じく、研修で滞在したロスアンジェルスで聴いていたこともあり、いわば思い出のカンヅメのように、聴くたびにその時の記憶が甦ってきます。

 

 中古レコードを探すときは盤の状態を最優先しジャケットの状態や帯の有無は問わない、という、名付けて『聴ければええねん』主義を貫くボクも、この状態の良いLPを日本橋の中古レコード店で見つけた時には迷った末に購入を決めました。

 今考えても価格はちょっと高めでしたが、こうして改めてジャケットを手にとって眺めていると幸せになれます(*´ω`*)ので、これでよかったんだと思います。

 

 

ゲイトフォールドの見開きにはこんなカットが。西部開拓時代の衣装に身を包んだメンバーが、なぜか道路の上でディナー。

 

ジャケット裏には馬車で去っていくメンバー。よく見ると

馬車の向こうには自動車が行きかうフリーウェイが。対して、ドゥービーズの乗る馬車が進む道路は先が途絶えています。

 これがアメリカ社会の、古き良き開拓者精神の衰退を示唆しているとボクは推察しているのですが、おそらく他にも秘めた意味があるのだろうと想像しています。

 

こちら、日本語ライナーとは別に添えられた「バーバンク・サウンド」の手引き(?)

バーバンクサウンド、といえば帯にも

『最もナウな音』だそうで。

 

 そもそもバーバンクってどこよ(。´・ω・)?という方も多いでしょうね。バーバンクはロスアンジェルス郊外の街で、かつて航空機メーカーのロッキード社が拠点としたことで企業城下町として発展した歴史があります。

 またワーナー・ブラザーズの本社があることでも知られています。ちょうどボクが研修で滞在したころは映画『ラスト・サムライ』が公開中で、街には刀を振りかざして突進するトム・クルーズのポスターがあちこちに貼られていたのを思い出します。

 

 このバーバンク・サウンドという言葉はワーナーが当時プッシュしていたアーティストを日本でも売り出そうと当時のワーナーパイオニアのスタッフが考えたプロモーションなのでしょう。

 

 この”THE CAPTAIN AND ME"のリリースは1973年ですから、このLPは3年後の再発盤ということになります。 

 1976年はアメリカの建国200周年ということで日本のナウなヤング(笑)達の興味関心も高かったそうですから、この機を逃してなるものか、というレコード会社の意気込みは相当大きかったのでしょう。なお、イーグルスの”HOTEL CALIFORNIA"はこの1976年の12月にリリースされます。

 

 

 

 ドゥービーズは結成時のメンバーであるトム・ジョンストンが1975年頃に脱退し、マイケル・マクドナルドが加入することでそれまでのワイルドで開放的なロックから、AORを意識したメロウでアダルトなスタイルへと移行していきます。

 つまり、この”THE CAPTAIN AND ME"のリリースと、3年後の再発盤の発売の間にドゥービーズは大きく様変わりしたわけで、当時はマクドナルド加入後しか知らないのにこのアルバムを聴いて目を点にしたファンも多かったのではないでしょうか。

 

 大手ワーナーの潤沢な資金と強力なバックアップもあって、この頃のドゥービーズの音はとても聴きごたえがあります。さすがに時代もあって音の生々しさでは微妙なところもありますが、そんなこと、”Long Train Running"の前ではごく小さいことです(^_^)

 

 

 しかもアルバムではこの後に来るのがあの”China Grove"。イントロのあのギターの強烈な歪みはどうやって鳴らしているんでしょうか?

 

カッコええー!!

 

 他にもアコースティックギターの響きが美しい"South Side Midnight Lady"、アーシーでヒューマンな温もりを感じさせる”Dark eyed Cajun Woman"もまたドゥービーズの、アメリカンバンドならではの魅力をみせてくれます。

 

 個人的には70年代のアメリカの、特に西海岸のロックの最良質を体現したアルバムだと思っています。

 人工的なサウンド、機械的なビートに飽きがきた頃に聴くとちょうどいい解毒剤になりますよ。動画でご紹介した2曲で興味が湧いた方はぜひ機会を見つけて、アルバムを通して聴いてみて下さいね。

 

 

 

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