愛の世代の前に | walkin' on

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アナログレコードのレビューを中心に音楽に関するトピックスを綴っていきます
 歌詞の和訳や、時にはギターの機材についても投稿します

レコード番号:28AH1322(CBS SONY) 1981年

 

 アナログレコードにハマっていった理由はいくつかありますが、音の違いに気づいてしまったのが最も大きいですね。

 

 浜田省吾のアルバムはいずれもCDを買い集めて聴いてきましたが、

 

生活苦( ;∀;)で売却する。む、無念なり…

やはりまた聴きたくなる、手元に置いておきたくなるものでござる

デジタルだとSACDやハイレゾやらいろいろ出てくるけど、人間の耳にはアナログのほうが相性が良いのではござらぬか

(こう考えるようになるまでいろいろあったのですが、それはまた別の機会に書きたいと思います)

ここはひとつ、中古レコード屋をかたっぱしから回って探してみるのも一興でござろう

 

 というわけで、幸い大阪市内の、レコード店が多く集まる中央区の日本橋までは自転車で通える距離に住んでいることもあって、アナログLPによるアルバム買い直し&聴き直しの日々がスタートしたというわけです。

 

 浜田省吾のファンの皆様の反感をかってしまうかもしれませんが、この『愛の世代の前に』から『DOWN BY THE MAINSTREET』までのアルバムの、CDから聴こえてくる音にはずっと不満を抱いていました。

 当時の録音環境もあるかもしれませんが、人工的すぎるというか、生々しさに欠ける平板なサウンドという印象がついて離れなかったんですね。

 

 このLPは日本橋の、大阪では数店舗を展開する店で見つけました。それまでCDでしか眺めてこなかった省吾のアルバムジャケットはLPのサイズだとかなりインパクトがあり、あまり手持ちが無かったのですが無理して購入しました。

 

 帰宅後にオーディオで鳴らしてみると、CDとは明らかに音の厚みが違うのにびっくり。ベースやバスドラムの低音がぼやけず、ドスン、ブン、としっかり聴き取れます。

 それに、高音域の伸びがいいのか、CDだとどこか線が細く弱弱しかったシンセサイザーがキレイに、でもちゃんと主張のある音を鳴らしています。

 こうして気づけば何回も聴きかえし、歌詞カードを広げて歌を口ずさんでいました。手放してしまったアルバムとの再会、以上の喜びを味わえた幸せな時間でした。

 

 

  このLPの帯には省吾の、1981年9月から翌年1月にかけてのコンサートツアーの日程があります。

 その最後、1月12日の会場は日本武道館。これが自身初となる武道館公演なのです。

 

 シンガーソングライターとして1976年にデビューしたもののなかなか売れず、また作風を巡ってレコード会社との軋轢に悩まされた彼も79年にシングル「風を感じて」がCMに使われたことでチャンスをつかみ、翌年リリースのアルバム『HOME BOUND』では初の海外レコーディングをロスアンジェルスにて敢行、ストレートで情熱的なロックへの回帰を果たします。

 また、地道なコンサート活動が徐々に功を奏し、大ヒット曲こそないものの地方会場では確実に動員が期待できるようになりました。

 

 武道館公演は省吾の実力に目をつけたとあるプロモーターが提案したのがきっかけだったといいます。最初は省吾本人でさえとまどったというぐらいの無謀な挑戦でしたが、最終的にはレコード会社もゴーを出しました。

 

 しかし、そこで新たに難題が。来るべき翌年の武道館に向けて弾みをつけるためにもアルバムを一作リリースすることをレコード会社が省吾に求めてきたのです。

 それも、他のアーティストの新作リリースが予定されておらず、最も注目を集めやすいという理由で、80年の9月の発売というものでした。

 

 この要望を省吾が聞いたのが80年の7月。つまり製作期間はわずか2ヶ月しかありませんでした。

 

 当然、最初は断った省吾ですが、今後レコード会社がしっかりプロモートしてくれるのなら受けておこう、と考え、アルバム制作に同意します。

 六本木のワンルームマンションを借りてカンヅメ状態で作曲に励み、数日ごとに曲が出来上がっていくというすさまじいペースでした。レコーディングは2週間、その間にジャケットの撮影も済ませたといいます。

 

 

 デビュー前の新人の、低予算なやっつけ仕事のようなアルバムならともかく、既に大手レコード会社に所属のミュージシャンとしてはとても考えられないような制作過程を経てリリースされたこの『愛の世代の前に』ですが、やはりこの時期の省吾は充実していたのでしょう、表題曲のソリッドで硬派なメッセージ、「陽の当たる場所」のセンティメンタルで美しいメロディ、若さゆえの激情を鮮烈なタッチで描き出した「ラストショー」、どれもほとばしるような情熱が感じられます。

 

 

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