スマートメーターが使う「高周波」とは? 仕組み・通信方式・普及状況を整理してみた

気づけば、電力メーターの検針員さんを見かけなくなった、という方も多いのではないでしょうか。多くのご家庭に設置が進む「スマートメーター」。便利になった一方で、「電波を使っているらしいけど大丈夫なの?」という声も耳にします。今日は、スマートメーターが使う高周波について、事実を中心に整理してみたいと思います。

スマートメーターの基本的な仕組み

スマートメーターは、電力使用量を自動で計測し、そのデータを通信によって電力会社に送る電子式の電力量計です。今日注目したいのは、この「通信」の部分で使われている高周波の電波について。多くのスマートメーターは、920MHz帯という周波数帯の高周波を使って、近隣のメーターや中継機との間で短距離の無線通信を行っています。

920MHzとは、1秒間に9億2,000万回という非常に速い波(電磁波)の振動を意味します。周波数が高いほど「高周波」と呼ばれ、一度に運べる情報量は増える一方、遠くまで届きにくい性質があります。920MHz帯は、AMラジオ(中波)やFMラジオ(超短波)よりも周波数の高い「極超短波(UHF)」と呼ばれる帯域です。計測データは、この高周波の無線またはPLC(電力線通信)で電力会社側に送られ、「訪問検針」が不要になります。

「デュアル方式」― 無線とPLCの組み合わせ

日本のスマートメーターでは、メーター間のデータのやり取りに高周波の無線(920MHz帯を使った「マルチホップ通信」など)を用いる方式と、電力線そのものを通信路として使うPLC(電力線通信)を用いる方式があります。関西電力の事例では「通信ユニットは計量データを無線やPLCを使用して電力会社に送信する」とされ、設置環境(集合住宅・戸建て・電波の届きにくい地下など)に応じて使い分けられています。こうした「無線」と「有線(電力線)」を状況に応じて併用・補完する考え方が、いわゆる「デュアル」な通信構成です。どちらか一方が使えない環境でも、もう一方の経路でデータを届けられる、"保険"のような仕組みと捉えると分かりやすいかもしれません。

メーター同士が「バケツリレー」する仕組み

この無線マルチホップ方式には、もう一つ知っておきたい特徴があります。東京電力パワーグリッドの公式サイトによれば、この方式は「隣接したスマートメーター同士がバケツリレーをしてコンセントレーター(集約装置)までの通信を行う方式」と説明されています。つまり各メーターは、自分自身の計測データだけでなく、近くのメーターのデータも中継しながら、最終的に1台のコンセントレーターまで届けているのです。

ここから分かるのは、メーターの位置によって送信の頻度に差が出うる、という点です。ネットワークの末端のメーターは基本的に自分のデータだけを送りますが、コンセントレーターに近い場所や中継経路上のメーターは、自分のデータに加えて周囲のメーターの中継分も送ることになります。良し悪しの話ではなく、無線マルチホップ方式が持つ構造的な特徴です。なお、コンセントレーターの具体的な設置場所(電柱か、集合住宅の共用部かなど)や、1台がカバーするメーター台数については、公開資料の範囲では確認できませんでした。

気になる「高周波の強さ」

スマートメーターの無線通信部分の多くは、920MHz帯の「特定小電力無線局」というカテゴリーに分類されます。総務省告示や関連規格(ARIB STD-T108)によれば、この周波数帯を使うテレメーター・データ伝送用無線設備の送信出力(空中線電力)は、「0.01W(10mW)以下」、条件によっては「0.01Wを超え0.02W(20mW)以下」と定められています。テレビ・ラジオ放送の送信所や携帯電話基地局のアンテナがワット単位の大きな出力を扱うのに対し、この区分そのものが極めて小さな出力しか認めていません。加えて、四六時中発し続けているわけではなく、短時間だけ送信し、それ以外は電波を出さない「間欠的」な通信を行う設計です。この区分には、ワイヤレスマイクやキーレスエントリーなども含まれ、いずれも出力上限が厳しく定められた、ごく弱い高周波を使う機器です。

100世帯のマンションでは? ― 「合計」で考えるとどうなるか

ここまでは「メーター1台あたり」の電波の強さについてお伝えしてきました。ただ、実際の集合住宅や住宅街では、1台だけでなく数十台、場合によっては100台を超えるメーターが同じ建物・同じエリアで動作しています。1台あたりが弱くても、多数が同時に動いていたら合計ではどうなるのか、という疑問はもっともだと思います。

分かっている事実を整理すると、1台あたりの送信出力は前述の通り0.01〜0.02W以下で、常時ではなく間欠的にしか送信しません。海外の参考データですが、アメリカの電力研究機関EPRIの2011年調査では、多くのスマートメーターの実際の送信時間の割合は「1%以下」、1フィート(約30cm)地点での被ばく量は米国基準(FCC PEL)の0.14%程度、とされています。仮に全メーターが法令上限いっぱいで送信し続けたと仮定した単純計算でも、100台で0.02W×100台=2W相当が100台分の別々の場所に分散するのであって、1か所に集中するわけではありません。

ただし正直にお伝えすると、多数のメーターが同じ建物・地域で同時に動作した場合の「合計としての電波の強さ」を実際に測定した日本国内の公的データは見つけられませんでした。海外でもアメリカのカリフォルニア州科学技術評議会(CCST)が2011年にまとめた報告書は「家庭内の電波ばく露は携帯電話や電子レンジと比べてごくわずか」と結論づけた一方、集合住宅でメーターが密集する場合(メーターバンク)の具体的な数値は含まれていませんでした。環境政策研究者のダニエル・ハーシュ氏はこの結論に反論し、多数のメーターの累積的なばく露は「携帯電話や電子レンジよりもかなり高くなりうる」と主張しており、専門家の間でも見解が分かれています。

つまり「1台あたりは法令で厳しく制限された弱い電波である」ことは事実として言える一方、「多数が集まったときの合計値」については、煽るのも安易に「問題ない」と言い切るのも、確かなデータに基づく説明にはならない、というのが正直なところです。今後の公的な調査が待たれる部分と言えそうです。

普及率・普及台数はどれくらい?

電力各社の公式サイトによれば、低圧スマートメーターの導入はすでに完了段階に入っています。関西電力送配電は「2023年3月末時点で、低圧需要全数となる約1,305万台を導入」と公表しており、同社エリアでは実質100%設置済みです。東京電力パワーグリッドはさらに早く「2020年度までに約2,840万台」の設置を終え、現在は安定運用フェーズに入っています。中部電力・北海道電力・東北電力・北陸電力も、2023〜2024年度を設置完了の目標時期として掲げていました。

2026年である現在、これらの目標時期はすでに過ぎており、低圧スマートメーターの設置は全国的にほぼ完了しているとみられます。ただし、最新の完了実績を個別に確認できたのは関西電力送配電と東京電力パワーグリッドの2社にとどまり、他社の最新状況や全国合計の普及率は、資源エネルギー庁や各電力会社の公表資料でご確認ください。

電磁波を気にする声と、公的な見解

スマートメーターが高周波の無線通信機能を持つことから、「電磁波が体に影響するのでは」と気にされる方がいらっしゃるのも事実です。海外、特にアメリカ・カリフォルニア州などでは、設置後に睡眠障害や頭痛、耳鳴りといった体調不良を訴える、いわゆる「電磁波過敏症」に関する声が上がった経緯もあります。

一方、日本の公的な立場としては、総務省が「電波防護指針」を定めており、「電波が人体に与える影響に関する60年以上の研究の蓄積」を踏まえて策定されたものとされています。この基準値は国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)などの国際基準と同等であり、「基準値を満たしていれば人体への安全性が確保される」というのがWHOやICNIRPを含む国際的な共通認識だと総務省は説明しています。「不安の声」と「公的機関が示す安全基準」の両方が存在するのが現状であり、どちらか一方だけを煽るのではなく、両方を踏まえてご自身なりに判断していただくのがよいのではないかと思います。

おわりに

スマートメーターは、検針の手間を減らす便利な仕組みです。通信に使われる高周波は厳しい出力制限の中で運用されていること、1台ごとの電波は弱くても多数が集まったときの合計値は公的なデータが見当たらないこと、電磁波への懸念の声と公的な安全基準の両方が存在することを、今日は整理してご紹介しました。日々の暮らしを支えるインフラについて事実をベースに知っておくことは、無用な不安を減らすことにもつながるのではないかと思います。

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【参考文献】

・Wikipedia「スマートメーター」(仕組み、通信方式、各社の導入台数・スケジュール、電磁波過敏症に関する記述)

・関西電力送配電 公式サイト「スマートメーター」(2023年3月末時点の導入台数・普及状況)

・東京電力パワーグリッド 公式サイト「スマートメータープロジェクト」(導入台数・通信方式・バケツリレー方式の説明)

・総務省 電波利用ホームページ「電波防護指針」(ICNIRP・WHOとの整合性についての記述)

・ARIB STD-T108「特定小電力無線局920MHz帯テレメータ用、テレコントロール用及びデータ伝送用無線設備」(送信出力の規定値)

・EPRI(Electric Power Research Institute)2011年調査(スマートメーターの送信時間割合・被ばく量に関する報告、英語版Wikipedia「Smart meter」経由)

・California Council on Science and Technology「Health Impacts of Radio Frequency from Smart Meters」(2011年4月)、およびダニエル・ハーシュ氏による同報告書への反論(英語版Wikipedia「Smart meter」経由)

※本記事は公開情報に基づく一般的な解説であり、特定の商品・サービスの効果を保証するものではありません。最新の普及率・普及台数は各電力会社・資源エネルギー庁の公表資料をご確認ください。