アフガニスタン情勢は米軍が撤退したことに

より、また一つの大きな転機を迎え、今世界の

目は、アフガニスタンの人道危機に向けられている

 

アフガニスタン情勢を耳にする時、2年前に

アフガニスタンで凶弾にあった中村 哲 氏の

ことを鮮明に思い出す

 

この不透明な情勢を見て、当時ブログにアップ

した氏の言葉をもう一度振り返りたいと思う

 

 

 

・・・利害を超え忍耐を重ね、裏切られても

裏切り返さない誠実さこそが、人々の心に触れる。

それは武力以上に強固な安全を提供してくれ人々を

 

動かすことができる・・・武力行使によって守られ

るものとは何か、そして本当に守るべきものは何か

静かに思いを致すべきだと思う。

 

・・・今ベンガリ砂漠の森は静寂が支配している

生活は安定に向かっている。それは座して得られた

ものではない生き延びようとする健全な欲と

 

良心的な協力が結び合い、すざましい努力によって

結実したからだ。平和とは観念ではなく実態である。

 

 科学経済、農業、あらゆる人の営みは、自然と

人と人との和解を探ること以外に生き延びる道は

ないであろう。

 

今その声は小さくとも、やがて現在が裁かれ

大きな潮流とならざるを得ないはずだ。

これが30年間の現地活動を通して得た平凡な

結論とメッセージである。

 

 

今アフガニスタンは政権が統治能力を失い

いとも簡単にタリバン勢力に制圧されてしまった

 

2001.9.11 あの世界を震撼させた同時多発テロ

以降の20年に及ぶ、アメリカの対テロ戦争という

名の軍事介入から、自国の都合だけで数万に

及ぶ軍とその関係者を撤退させた

 

アフガニスタンの国民約3800万人にとって

今どれほどの恐怖と不安を抱えているか

命がけで脱出しようとするあの空港での映像を

見れば一目瞭然である

 

その姿はまさしく前記した中村哲氏の言葉『武力

行使によって守られるものとは何か・・・静かに

思いを致すべき』の回答そのものが現れた姿だ

 

20年間に及ぶ膨大なエネルギーの結果現れた

のは平和でもなく民衆の安定でもなく、真逆の

混乱と恐怖という姿であったということは明らかだ

 

"これはテロとの戦争だ"と正当性を掲げた

アメリカであってもそれは常に自国の利益のため

である

 

 

他国に国土を破壊され、軍事、資金面で依存に

陥ってしまったアフガニスタン政府は汚職に

まみれ自立する意思も失い、もはや独り歩きが

困難な状況に陥ったというのが事実である

 

『生き延びようとする健全な欲と、良心的な

協力が結び合い、すざましい努力によって・・』

という中村氏の言葉は平和と安定を得るうえでの

真実の心構えを教えている

 

今アフガニスタンの人たちは厳格な取り締まり

のもとで厳しい生活を強いられているという

 

20年ぶりに実権を握ったタリバン イスラム

原理主義を掲げた当時のタリバン政権による

弾圧には処刑を含む残虐、極端な自由の

制限などの前歴がある

 

しかし当時は国としての統治そのものが

作られてさえいなかった 今タリバンは単独で

行政を遂行する能力はなく既存の行政組織の

協力なしでは統治は不可能だと云われている

 

20年前とは変わり人権に対する変化も見せて

いるというがイスラム法に元ずく統治を

変えようとはしていない

 

そこにはアフガニスタン国民にとってはもちろん

一致して対応しようとする国際社会にとっても

極めて困難な状況が予想される

 

『やがて現在が裁かれ・・・』

軍事介入は失敗という形で裁かれたのだ

 

しかし国際社会は現在の状況に対しても安易に

軍事に頼ることなく、本気で他国の和平を

探り、地道な努力と洞察が求められる

 

この在り方をアフガニスタンを愛した中村 哲

氏は静かに願っているのではないだろうか