発表内容

生物が酸素呼吸によってエネルギーを産生する際には、その副産物として、生体内に活性酸素種(過酸化水素、ヒドロキシラジカル、スーパーオキシドなど)が発生してしまいます。

また、活性酸素種は、人体に病原体が侵入した際にもマクロファージなどの免疫細胞から大量に産生されることが知られています。

活性酸素種の過剰産生は、細胞にダメージを与え炎症を惹起する酸化ストレス刺激となり、老化や癌、慢性炎症性疾患、メタボリックシンドローム、神経変性疾患などの疾病の原因となることが明らかにされています。

ヒトの酸化ストレス応答には、ストレス応答MAPK(SAPK)経路という細胞内情報伝達経路が中心的な役割を担っています。酸化ストレス刺激によってSAPK経路が活性化すると、生体のストレス応答に関わる様々な遺伝子の発現が誘導されて、最終的に炎症・細胞死などが惹起されます。

しかし、生物がどの様にして生体内の酸化ストレスを検知し、SAPK経路の活性化を導くのか、その分子メカニズムはこれまでよく分かっていませんでした。

今回、東京大学医科学研究所の武川教授らの研究グループは、SAPK経路の最も上流のタンパク質リン酸化酵素(SAPKKK:MTK1、ASK1など、ヒトでは十数種類存在)の一つであるMTK1が、生体内の特に強い酸化ストレスを選択的に検知する「酸化ストレス・センサー」として機能しており、SAPK経路の強力かつ持続的な活性化を導いて、細胞死や炎症の制御に重要な役割を果たしていることを見出しました。

 

 

 

 

 

 

 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsir1981/13/5/13_5_413/_pdf