~悲劇~ | SF小説「宇宙惑星物語」

~悲劇~

~悲劇~


SF小説「宇宙惑星物語」

マーク=ギンガメルスガンデの身体が白濁色のヴェールに包まれたかと思うと、その色は真っ白に変化し次第にその表面に細かい氷の霜が現れた。彼の身体は石像のように硬直し、眼球は見開いたままで、その差しのべられた手は間違いなく、真っ直ぐにジーゼルマッフルを求めて止まっていた。


「マ・・・マーク?!」


レーザ銃と、電子銃を肩に担いだジーゼル=マッフルが震えながらギンガメルスガンデ大統領の体に近づく。


「ああ、神様、どうか、・・神様・・」


ジーゼルマッフルが小刻みに震えながら、凍りついたギンガメルスガンデの足元に崩れ落ち、彼の真っ白のガラスのような靴に手をそっと伸ばす。


カキン!


静寂の中、響き渡るガラスの割れる様な音が響いた途端


カシャカシャカシャ・・・・


彼の凍った肉体が、崩れ落ちる氷像のように、細かい氷の断片となって地面に一つずつ舞い降りる。


「ああ・・!神様!」


ジーゼルマッフルが恐る恐る見上げた瞬間、その落ちた断片はその大統領の、愛する男の頬であったことがわかった。


カチーン・・・カシャカシャ・・・


その頬は地面に落ちて細かい細かい粉と化す。


震えの止まらぬ指先で、自らの体温までも奪われるような感触に襲われながら慌ててジーゼルはその粉を掻き集める。


「ああ・・どうか神様・・・」


カチーン・・カチーン・・・


「ああ、どうか、お願い・・だれか、・・・」


ジーゼルの願いも虚しく、一つずつ崩れ落ちる。


その断片を掻き集めるが、どんどんその速度は早まる。粉になったその体をジーゼルは狂ったように掻き集め、それが次第に、灰色の液体に変わるのを彼女はすくって確かめる。


血走る眼でゆっくりと上を仰いで、彼女が見たものは、頭部と、手首から先の無くなった、ギンガメルスガンデの微動だにせぬ凍りついた肉体だった。


ああ・・どうか、これが夢であってほしい

悪い夢でありますように・・


ジーゼルはその欠片を狂女のように寄せ集める。


この粉や液体が・・再生できるのだろうか・・きっとできる!最新の医療で、なんとか元に戻せる!一滴も無駄には出来ない!


必死にそれを両腕で包み込みながら、震えて縮こまり、ジーゼルはマーク=ギンガメルスガンデの笑顔を思い起こした。


こんな風に別れることなど、有り得ない!


罪であると知りながら、男として、愛している。父としても愛している。一国民としても愛している。どれも同時にあるとすれば神が与えた、罪だ。


罪など怖くなかった。今も怖くない。罪悪感もない。国民の前でそれを晒されても、何の申し開きもしない。


ただ、愛があるだけだ。ここにも、そこにも、すべてが自分だ。


こんなに愛しているのだ。自分の一部分であり、それがここにこうやって、溶けている。こんな液体や、粉になっても、こうも愛おしい。きっと彼を元に戻せる。そうだ、こんなに愛しているのだから、恐れてはいけない!


「オホホホ!コルネリウス!見て・・あの女の無様な姿を・・・国民の上に立つべき女と男が、こんな醜態を晒して・・なんという、失態!なんという、滑稽!」


アメジストグロッサがこれ以上愉快なことは無いと、周囲の観衆の顔を見渡しながらこの悲劇の顚末を満足気に眺める。


「愚かな女・・・そして、素晴らしい、展開!」


アメジストはうっとりと深呼吸する。


バックスラーの観客たちは先程よりも益々増え、その大きな立体ビジョンの周りに大勢の群衆が群がり始めている。

「親父!」


ジーゼルより少し離れた場所からその壮絶な景色を目の当たりにした、息子、ジル=ギンガメルスガンデが叫ぶ。


「おや、ジュニア、登場かな。」


ロームキンがジルを見てその武器の照準を彼に合わせる。


「おのれ!」


ジルが電子銃を振り上げたその時!脇にいたトーマスが思いきり電子フェンシングを振り上げる!


ブーン!


その先から飛び出した二つの電子ボールが、ロームキンの冷凍レーザガンに見事命中し、ロームキンが電撃を食らって思わずそれを弾き落とす!


ビュウ!


突然、ピーンハリがホールズに再び電子フェンシングを振り上げるが、ホールズが飛び上がってその電子ボールを俊敏にかわす!二人の死闘が始まり、ホールズはピーンハリを押しやりながら、非常出口へと導く!非常口にはバイカイやベントンがさあ来いと言わんばかりに、電子フェンシングを引き抜いて待ち受けている!

ピーンハリを追い、10人程の兵士が後に続く!


一方、トーマスが再び電子フェンシングをロームキンに向けた途端、


ドーン!


背後の兵士が電子銃でトーマスを打ち抜く!


「うわあ!」


ビリビリとその衝撃を受けてトーマスがひっくり返った!


「トーマス!」


駆け寄るジルに、ロームキンが飛び掛かって、ジルの頬を思いっきり拳で殴る!


「メーギルをどこに隠した!小僧め!余計なことを・・親父とそっくりの出しゃばりめ!」


バキン!


鈍く歯の折れる音が木魂し、ジルが一瞬気を失いそうになる!


「ジル!」


鉄格子の中からゴルドンが叫び、出口が開かないか、乱暴にガシャンガシャンと思い切り揺らす。


「王子。」


ゴルドンの脇から声をかけたのは、シバーである。シバーは尻尾にゴルドンの新型ホイップを絡め、それをそっと隙間に差し込むと、鉄牢の中に置く。


「何のつもりだ。」


ゴルドンはシバーのエメラルドを睨む。


「・・・楽しんでるのか」


「いえ、あなたを助けたいのです。」


ゴルドンは黙ってそれを素早く手に絡め取るとグリップをニュートラルから、高熱モードに切り替えた!


ガチン!


確かな手ごたえを感じた瞬間、ゴルドンがそれを鉄格子に巻きつける!


ジュジュジュジュ・ー!


物凄い熱だった!真っ赤に溶けるその鉄格子は、瞬く間に赤い血液のように流れ落ち、その出口のパネルをあっという間に真っ黒の炭に変えた。


ガシャーン!


足で扉を蹴飛ばし、ゴルドンがロームキンに飛び掛かっていく!ロームキンがジルの頭を思い切り片手で床に打ち付けた!


「うが!」


呻き声と共に、ジルが気絶した。


ロームキンは飛び上がって会議場の椅子に飛び上がり、ゴルドンを睨みつける!


「帝国カピタの兵士!この反逆者の生き残りの、スパイの青年を今すぐ捕え、殺すのだ!」


兵士たちはロームキンの命令に従うか否かを迷いお互いを見る。ゴルドンが振り返ってその隙に彼らの方に飛び掛かり、思い切り、ホイップを振り上げる。


ブウーン!


凄い唸り音と共に、そのホイップが2人の兵士にまとめてグルリと巻きつく!


ガチン!


まきついた勢いで二人の兵士は頭をぶつけ合う。


ゴルドンがグリップをニュートラルから電気モードに切り替える!


ビリビビリ!


「うぎゃあ」


凄まじい電気が飛び散り、兵士はプスプスと焦げた異臭と共に崩れ落ちる。


「わ・・・・うわああ!」


ゴルドンの怪力をまざまざとみた残りの兵士たちが慌ててゴルドンに向かって散弾銃を撃ち始める!


ドカーン!


ゴルドンがそれを危うく避け、散弾銃は壁に当たり、凄い爆発音でTDSAの会議場を揺さぶる!


「あぶねえな。」


ゴルドンが冷や汗をかいてニヤリと笑う。


「おのれ・・・色狂いの女の息子の分際で・・・」


ロームキンが、冷凍レーザガンを拾おうと床に舞い降りた瞬間、そのレーザガンをしなやかな黒い尻尾でもっと早く絡め取ったのは、シバーだった。


「シバー!何をする・・?!」


「あなたは、もう終わりですよ。」


「終ったのは貴様だ!老犬め。貴様らムードルなど、所詮捨て駒なのだ。もう、惑星レイに必要はない。おとなしくフィールドゲートの番犬をしていればよかったのだ!」


シバーが冷凍レーザガンを足で蹴っ飛ばし、ジーゼルマッフルがよろめきながらそれを必死に抱え込む。


次から次へと、入口から帝国カピタの兵士が流れ込んでくる!


ブーン!ブーン!



凄い怪力で次から次へと兵士をなぎ倒すゴルドンに、帝国の兵士たちが怯み、後退りする。


「何をしているの!そんな青年は早く殺って、ピーンハリを助けに行くのよ!」



アメジストグロッサが、ビジョンに向かって叫ぶ!






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