~大混乱~ | SF小説「宇宙惑星物語」

~大混乱~

~大混乱~

(あれは、なんだ?)


SF小説「宇宙惑星物語」

電子檻の中から、兵士の取り出した扇形の兵器を興味深そうにゴルドンはのぞいた。ここから出るチャンスはまだか?自分を取り巻く不気味な光を放つこの電子の線にそっと触れてみたい感情に駆られるが、それは無意味なことだと理性が説得した。あの、スイッチパネルだ。あそこを破壊すればメイン電源は間違いなく落ちるだろう。これを破壊するのは、武器を持っていない自分ではまず無理だ。敵が何かの機会にこれを開けるときしかチャンスはない。


ふと足元をみると、檻の周りを静かに回るシバーと目が合う。そうだ、この犬が俺のホイップを取り上げたんだ。こいつはあの、腹の内側に俺のホイップをまだ隠し持っているようだ。一体なぜ?この犬の魂胆もよく見えない。宝石のように鋭い光を放つエメラルドの眼球を、ゴルドンは上から静かに見据えた。


「TDSAに武器を持ち込み、そしてこの神聖な場でそれを振り回すとは、貴殿等は何たる傲慢な侵略者か?これが全世界に映し出されている光景だとしたら、我が星系の民は、貴殿等を決して許しはしないだろう!」


マーク=ギンガメルスガンデが、ピーンハリ=ルーゼンに向かって叫んだ。


「確かに、ギンガメルスガンデ大統領がおっしゃるように、このトールドーン星系は、優れた惑星集団である。しかし、この長い一万年の間、一度も戦いの耐えた時代は無い。現在鎮静化しているのも、わずか数十年の事で、いつまた戦争が勃発しても不思議ない状況にある。これだけ文明が発達しているにもかかわらず、おぞましい戦いが終結しないのは、この、星の体質にあるのだ。多くの惑星集団を見てきた我々がいうのであるから、間違いはない。」


ピーンハリ=ルーゼンが、ゆっくりと中央の舞台から降り、マーク=ギンガメルスガンデに向かい合う。


「我々は貴殿等の惑星集団を今更犯そうと思うはずはない、我々には豊かな財源があり、多くの星がある。民族も宇宙の隅々にまで行きわたり、静かに浸透して、平和をもたらしてきた。しかし、その平和に及ぶまでには、外科的手術が必要な場合が多く、特にこの、トールドーンにおいてはそれが最も重要視されるケースである。」


「では、何が原因なのか、聞こう。」


ギンガメルスガンデの問いに、ピーンハリが満足げに頷く。


「この星系は英雄信仰が強い。一番力をもつラスポタニテのような星がそうであってはいけない。強すぎる信仰が、戦いを齎す。信仰は思想であるべきであって、一、人間の存在であってはならないのだ。よって、君はもっともこの星系で危険な存在であると、我々は考えている。」


兵士がその照準をマーク=ギンガメルスガンデにぴたりと合わせた時だった!


ブーン!!


一弾の電子弾が、兵士の武器に目がけて飛んで行った!兵士の手にそれは見事命中すると、彼は稲妻に撃たれたように手を上げてぶるぶると震えて天井を仰いでいる!その電気の衝撃により、武器は床に落下してカランカランと空回りした。


ホールズだった!電子フェンシングを振り上げたホールズが再び、中央の舞台に躍り出て、優雅に電子フェンシングを振り回すと、目も眩むような速さでその兵士の武器を足で蹴っ飛ばした。



ウワアー!


TDSAの会場はパニックに陥り、慌てて出口を求めて各国首脳は駆け出す!入口は兵士に封鎖されているため慌てて引き返すが、ごった返して大勢が転倒する。


「こっちだ!みんなこっちにこい!」


大きい声でベントンとバイカイが叫び、反対側の非常口へ人々を誘導する!ジル、ジーゼルマッフル、トーマスも会場に足を踏み入れる。


「マーク!」

ジーゼルが人の波に飲まれながら、ジル達と叫ぶ!大統領はどこか?!助け出さねば!


「ゴルドン!何処だ!」


トーマスが大声で叫ぶのをゴルドンは檻の中でしっかと捉えた!


(トーマスだ!間違いない!どこか!)


「マーク!非常口から皆と一緒に逃げるのだ!」


ホールズがギンガメルスガンデに叫び、その電子フェンシングの先端をゆっくりとピーンハリ=ルーゼンに向ける。


「まだお若いようだね。誰に命令されているのかは知らないが、思想を語る前に、マナーを学んできたまえ。」


ホールズが優しく笑うと、再び電子フェシングを大きく振り上げた!ブーン!唸るようなその矢先から飛び出したボールがゴルドンの檻のタッチパネルに見事命中する!


バリン!バリバリ!


凄い衝撃で、電子檻が黄色い電光石火を散らし、中にいるゴルドンが焼け焦げてしまうのではないかと思うほどであったが、その衝撃の後、電子錠はただの金属の檻と化した。


ブーン!


素早く放った第二弾はピーンハリ目掛けて飛んでいく!


バチン!


ピーンハリの腰から出てきたのは紛れもなく、電子フェンシングである。帝国カピタ製の優れた武器で、スポーツの道具ではない。ピーンハリは帝国でも有名な電子フェンシングの名手であり、そのボールを見事素早く受け止めて跳ね返した。


二人が舞台でゆっくりと円弧を描きながら、防御と攻撃の姿勢で、ゆっくりと牽制し合っている。


ピーンハリは自分に立ち向かういまいましいこの男が一体何者なのか、記憶の糸を必死に辿っている。TDSAの会場は混乱と化し、各国首脳は慌ててバイカイの導く非常出口へ走っていく!


ホールズと、ギンガメルスガンデが会場の入り口から次々に入って来る兵士たちにぐるりと取り囲まれて行く!


「この男は、ホールズという男です。ホールズアタックという、ゲリラ戦により、最後の戦争を食い止めた英雄として名高い人物です。」


コルネリウスが、アメジストグロッサに説明を加える。


「忌々しい!この男も、一緒に片づけるのよ!」


立ち上がったままのアメジストグロッサがビジョンに向かって叫ぶ!


その時だった。舞台の奥から突然、ロームキンが武器を持ち上げて叫ぶ。


「マーク=ギンガメルスガンデ、君の時代は終わりだ。」


「危ない!」


ホールズが、そのフェンシングを振り上げようとした時だった。ロームキンが拾い上げてきた先程の不思議な扇形の武器の先端が青白く光り、そこから無数のレーザーが放射される!


「マーク!」


ジーゼル=マッフルが舞台の中央に見つけたマーク=ギンガメルスガンデを発見し、駆け出したその瞬間だった。


ギンガメルスガンデの体は無数のレーザー光線に取り囲まれ、不思議な音を立てて彼の体をゆっくりと包んでいく。その光に包まれた瞬間、マーク=ギンガメルスガンデの目が、間違いなく、ジーゼル=マッフルを捕えた。


(ジーゼル!)


ホールズがロームキン目掛けてフェンシングを振り上げた途端、ピーンハリルーゼンがホールズに飛び掛かる!


「マーク!」


「親父!」


ジルが中央の舞台に駆け寄った時、ロームキンの放つレーザ光を浴びて硬直する、ギンガメルスガンデ大統領の体があった。


「冷凍ビームだ。無数のレーザをあらゆる角度から照射することで、超低温に冷凍される。もう大統領は死んでいる!」


ピーンハリが冷たく笑った。






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