~潜入~ | SF小説「宇宙惑星物語」

~潜入~

~潜入~


「アッハハハハハハ!コルネリウス!ごらんなさい!トールドーンが誇る、TDSAのフィールドゲートがあのように木端微塵に!」


ワイングラスを片手に立ち上がり高らかに笑うアメジストをコルネリウスが諌めようとして慌てて立ち上がる。


SF小説「宇宙惑星物語」

「アメジスト様、断片の回収に空母・パミールを仕向けたほうが良ろしいかと。大変な騒ぎになります。少なくとも惑星レイや、その他小惑星への影響は避けられないでしょう。」


「何を言っているの?コルネリウス。そんなことはこの星の連中にさせておきなさい!多少の損害は覚悟の上!さあ、TDSAの連中はどう出るか、楽しみなことだわ!」


グラリ!


大きく重心を傾け、揺れ動いたTDSAでは、観衆はギンガメルスガンデとピーンハリルーゼンの一騎打ちを待たず、何事が起きたのかと窓辺に走り寄った。


「先生!フィールドゲートだ!フィールドゲートがやられちまった!」


バイカイが会議場に響き渡る大声で叫び、各国の首脳がざわめく。


「まさか!」


その声につられ、大勢がその白く煙る遠方を、窓越しに見つめる。多くの者が細かく震え、その画像が真実かどうか互いに無言で確かめ合っている。


「引力の相互関係が崩れたのだ。それでこのように少し傾いている・・・」


ホールズが景色の変わった会議場の天井を見上げる。


「ロームキン、貴様はこのような破壊の侵略者に魂を売ったのだ!」


マークギンガメルスガンデが、黒づくめの怪人を指さして叫ぶ。


「フィールドゲートを破壊したのは、この異星人達であるという保証はない。君の判断はいつも強引で早急過ぎる。独善的な正義に酔いしれるのも構わないが、君のおかげで過去にしなくても済んだ戦争がいくつかあったことを、私はここで、事細かに説明ができる。」


怪人は天下のマークギンガメルスガンデを前に一歩も引く気配はない。


「さて、ちょうどこの場に、トールドーン星系を代表する二君が登場している。ここで、我々の要求に応じてもらえるかどうか、返答をもらいたい。」


ピーンハリ=ルーゼンが、マントを後ろに整え直し、目の前で争う二人のリーダーに冷たい視線を投げかける。


「我々惑星レイは、ご存知のように、大王ニコル=ポマノフが事故により死去し、民会がデモを起こし、国内は混沌とした事態にある。更には、民会と王家との対立が長く続いたため、技術開発力に遅れ、財源も底をつき、植民地や人口惑星の管理も行き届かない有様である。この燦々たる事態から脱却を図るため、貴殿等の技術力を生かしたい。更には、新大王の確立の援護と、民会の鎮静化。そして最後に平等な貿易条約の締結。最後に2兆ゼッツの借入金の申し込みをしたい。その代り、貴殿等の民族の、規定数の受け入れを許可して行きたいと思う。如何かな?」


ロームキンが答え、ピーンハリの答えを待つ。


「全ての要求を呑むことは出来かねる。しかし、前向きで平和的な判断と捉えてよろしいのかな。」


ピーンハリが微かに笑う。


「平和的だと!貴様!宇宙の外を見ろ!これが平和的解決なのか!たった今、フィールドゲートの数百人が殺されたのだぞ!」


マーク=ギンガメルスガンデがロームキンの黒い襟首を掴みあげるが、怪人はその細い腕で軽々とその掴んだ腕を払いのける!


「友好の印に、貴方達に、進呈したいものがある。貴方達のお探しになっているもの。」


ピーンハリが首を傾げる。探しているもの?探しているものは一つしかない。


「探しているものですって?!」


ガシャーン!


大きな立体ビジョンの前で、アメジストグロッサが、ワイングラスを落とす。バックスラーの屋外オペラ座の観客たちはトールドーン星系に起こる異常な事態に少しずつ気づき始めたようで、半数が席を外したようだ。


「まさか、あの玉のことでしょうか・・・」


コルネリウスが、怪人の思わぬ言動に再び立ち上がる。


「あの男め・・大人しく言うことに従っていればよいものを・・・」


アメジストグロッサが、ワイングラスを握りつぶす。


ビジョンの中のロームキンがにやりと笑い、コンビエンスに語りかける。暫くすると会議場の入口から、数人の兵士が電子牢を引っ張って来た。鳥かごのような電子の網目の中に静かに何者かが座っている。


「捕虜でしょうか?」


コルネリウスが画面を覗き込む。近づきすぎて、立体ビジョンに飲み込まれているようだ。


「あの青年だわ!コルネリウス!あの!青年よ!ごらんなさい!」


電子牢に繋がれているのは、紛れもない、あの、ベクトル王朝の11番目の庶子である!


「ゴルドン!」


バイカイが大声で叫び、走り出そうとするのを、ホールズが諌める。


「先生!ゴルドンだ!捕まってる!」


「バイカイ、いいから、静かにするんだ。いいかい?今から、帰路の確保をしておいてくれ。もうすぐでここも安全な場所ではなくなるだろう。非常口のドアを開放しておくのだ。TDSAの司令塔も機能しなくなるだろう、そうすれここは缶詰だ。」


ホールズが、バイカイの耳元で静かに囁く。


ちょうどその頃、TDSAの入口に、ジーゼルマッフルや、ジル達の戦闘機が到着していた。TDSAのゲートはフィールドゲートの破壊により大混乱に陥り、誘導もないまま、隙間を探しての到着となった。騒がしいゲートの中、ジーゼル、ベントン、テリー軍曹と兵士達、そして、ジルとトーマスが船を降り、セルフィードとジェットタクシーの運転手は戦闘機に残った。


「会議場はこちらよ!」


ジーゼルが先頭に立ち、ベントンが武器を全員に配り、一同を従えて通路に潜入する。軍隊で訓練されたジーゼルマッフルの潜入の姿勢は全く隙なく、様になっている。


「ベントン!ドアはレーザでぶち破るのよ!」


絶対の安全を期して設計された超合金のドアも、ベントンのレーザー銃で情け容赦なくドロドロに溶かされていく!


「おい!ベントン!一体いくつドアがあるんだ!」


ジルが次から次へと立ち塞がるドアに、じれったそうに叫ぶ。


「まだまだありますよ、非常出口から潜入していますからこれでもガードが緩い方なのです。正規の通路は絶対にパスワードがなければ開きません。」


四つ目のドアが開いた時だった。


「うわ!」


向こう側にいたのは、何と、懐かしい、見覚えのある顔である!


「ジルじゃねえか!」


「バイカイ!そうか!お前、来てるんだよな!」


二人は抱きしめあい、バイカイがトーマスの頭を撫でる。


「スーザは!スーザは無事なのかい?!」


バイカイがジルの肩を揺さぶる。


「ああ、メーギルと夫人と安全な場所に隠した。ゴルドンは?!ゴルドンがここにいるはずだ!」


「奴は会議場で今、みんなの晒し者になってる」


「何だって!」


「大丈夫だ、ジル。俺が奴を助けるから、今は逃げ道の確保に来たんだ。ここを無事に出られるかわかんねえけど、おめえは帰れ!ここはやばい!ベントン、頼む!」


「帰るわけにいくか!さあ!ベントン!会議場に行くぜ!」


ジルがバイカイの止めるのも聞かず、開いた通路に目がけて突き進んでいく!トーマス、ジーゼルマッフル、テリー軍曹も後に続き、ベントンが最後にバイカイにウィンクする。


「始まってしまったな。」


「ああ、こんな場所で始まると思わなかった。今度ばかりは、やばいかもな。」


バイカイは溜息をつくとベントンと再びこれから戦場と化す、会議場に足を向けた。


会議場の入口に、シバーが姿を現し、静かに成り行きを見つめている。TDSAの張りつめた空気をいともせず、ロムキンは淡々と続ける。


「この青年は、ベクトル王朝の第11子として、衛星ラスから一人脱走し、惑星ラスポタニテにて匿われていた。どのような処遇を受けたのかは不明であるが、スパイとして養成され、我が国に侵入し、不敵にも、フィールドゲートを犯し、大王の命を狙い、更には、主犯格とみられる、メーギル王子一族を逃亡させた!貴殿等の態度は、惑星レイに対する冒涜であり、これを宣戦布告でないとどうしていえようか!」


突然、マークギンガメルスガンデが、笑い出す。


「ハハハハハ!おのれらの不甲斐無さを、この哀れな一青年に託し、欲望にまみれたこの異星人たちに隷属してまでも、力を得ようというのか!貴様のような人間がこのTDSAに足を踏み入れるべきではない!汚れた執政者め!さあ、青年を牢から解放してやるのだ!」


「そうはいかぬ。彼は、我々の望んでいた人間。先住民イディアとの決議により、衛星ラスにおいてこの一族は我々の裁判にゆだねられるべきなのだ。さあ、お引渡し願おう。」


ピーンハリが、ゴルドンの牢を引き受けるよう、兵士に伝える。


「裁判?処刑裁判か!そのような卑劣な手段、断じて許すことはできない。」


マーク=ギンガメルスガンデがその電子牢の前に立ち、ロームキンと睨み合う。


「ギンガメルスガンデ大統領。今ここで、もう一度お聞きしてもよいかな?」


ピーンハリがますます冷ややかな視線をギンガメルスガンデに投掛ける。


「貴殿等は、惑星ラスポタニテは、我々帝国の移民の請負と、貿易を拒否すると。そしてこの青年の身柄を拘束することに反対する、こういうことですな。これはつまり、我々を今後受け入れぬということ。」


「まったくおっしゃる通りだ。我々はどの国にも、隷属しない。誇り高い、自由の国、ラスポタニテだ。国民もこの映像を見てきっと理解してくれていることであろう。暴力には屈しない。」


「アハハハハ!」


アメジストグロッサが血まみれになった手を拭くのも忘れてこぶしを握り締める!


「コルネリウス!この正義漢を御覧なさい!独善的で判断力が薄く、自己陶酔に陥りやすい馬鹿な男の顔を・・・暴力でトールドーン星系を捻じ伏せてきた男が!これが最後の顔よ!よく、見ておきなさい。己の力の不甲斐無さを!」


アメジストグロッサがビジョンに叫んだ声が、ピーンハリにまるで届いたかのように、彼は舞台から数歩退くと、一人の兵士に合図を送った。


ピーンハリの一番傍にいた兵士は、脇から半径50cmほどの扇形の武器を取り出してきた。兵士は不気味に微笑みながら、ぐるりと会場の首脳達に向けて威嚇するような動作をして見せる。円弧の周囲に断続的に開けられた無数の噴射口が一体何処にターゲットを絞るのか、会場は息を飲んだ。






ロボット始めから読みたい方はこちらをクリック!
いて座


ランキングに参加しています!



SF小説「宇宙惑星物語」 border=


SF小説「宇宙惑星物語」 border=


にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ


blogram投票ボタン


クリックお願いします