ボイトレ発表会~鉄矢とともに~ | 和久井の部屋

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ボイトレ発表会2週間前。

 

私は絶望の淵にいた。

 

個性的な言葉でレッスンしてくれる先生の最大の魅力は”常にプラスの言葉をかけてくれる事”だ。

 

私がどんなに下手くそでも聞くに堪えない歌声でも、毎回ありえないくらい褒めてくれる。

 

それは今の私ができるレベルならこれで十分てきな、かなり低いレベルの段階での誉め言葉であるのは十分に理解しているのだけれど、やっぱり褒められると嬉しくて、なんならちょっと自信までつく・・という甚だしい勘違いまでする。

 

わかってる。

 

発表会を目前にし、先生は私が気持ちよく歌えるように魔法の言葉をかけてくれているのだと。

 

けれども浅はかな私は途端に浮かれる。

 

浮かれポンチな私はフワフワと浮かれながらルンルンで一人カラオケに行き、自分の歌声を録音し・・・一瞬で撃沈した。

 

ビックリだ。

 

こんなにも下手くそな歌を、先生はよくもあそこまで褒められたもんだとなんなら感心までした。

 

ひどい。

 

ひどすぎる。

 

まず、リズムが全くとれていない。

 

テンポがメチャメチャ遅く、全体的にのっぺりとしていて、そのくせ感情たっぷりで気持ちよく歌っている様子は聞き苦しく、そしてきっと見苦しい。

 

軽やかにルンルンで入店した1時間前とはほぼ別人の形相で、絶望の淵から命からがら店を後にした。

 

家に戻ってからボイトレ系のYouTubeを検索しまくり、楽譜をダウンロードし、初心に戻って歌を1から立て直した。

 

「発表会はこの方向でいこう!」とうっすら見えていた歌の方向性は一瞬にして暗雲が立ち込め、暗闇の中に消えていき、すっかり見えなくなってしまった。

 

暗闇の中で試行錯誤する私の方向性はブレまくり、混乱し、もうどうしたら良いのかわからなくなっていた。

 

そんな時褒めまくってくれた先生の言葉が一筋の光となり、私はその光にすがってみた。

 

「和久井さんの良いところは表現力。それは誰でも持っているものではないのだから、無くそうだなんて思わなくていいんだよ」

 

歌の技術よりも気持ちが先行してしまう私は、そんな歌い方を変えたくてボイトレを習い出した。

 

「感情を気持ちではなく、歌の技術で表現したい。その技術を教えて下さい」

 

と最初に言った一言に対しての先生からの言葉だった。

 

その時にも「気持ちを込めて歌う事はとても大切な事だから、そのままでもいいのに」と先生は言ってくれたのだが、私にとってその部分は欠点なのでやっぱり今でも改善したいという気持ちのが大きい。

 

けれども!!!!!!

 

もう技術云々などと言ってはいられないのだ。

 

本番まで既に2週間を切っている。

 

もう腹をくくってやり切った方がいい。

 

今は迷う事よりも方向性を定め、歌いこむ事のが重要だ!!!!と「そうだ!武田鉄矢でいこう!!!!」とナイスなアイデアが降臨した。

 

武田鉄矢法とは、どこまでも熱く、どこまでもソウルフルに、そう、深夜のスナックで熱唱するおやじバリに歌う事だ。

 

今の私にできる事はこれくらいしかないのだから、今の私の実力がこれなのだから、だったらやり切った方がいい。

 

暗闇の中でそう誓った私は、残り2週間を走り抜けた。

 

歌の練習とは別に、体調を整える事や基礎練も毎日こなした。

 

声帯があまり強くない私は毎日ハチミツをお湯でといたものを飲んだ。

 

ハチミツは1日に大さじ1~2くらい飲むのがベストらしく、そんなことを知らない私は倍以上の量を摂取していた。

 

そしてお腹を下した。

 

ハチミツ過剰摂取のひとつに”お腹が緩くなる”と書いてはあったが、”太る”とも書いてあった。

 

ならば太ったが下した、という事で一件落着で良しとした。

 

またリズムをとる事に夢中になりすぎて、情緒豊かな歌は元気一杯な歌に一変し、軍歌のようになった。

 

熱さの方向性を間違えている・・・と軌道修正もした。

 

心肺機能を高める為に風船を使ったトレーニングもしたのだが、やりすぎで疲労感一杯になり、肝心な歌の練習をお休みした。

 

と、役に立っているのか立っていないのかわからない基礎練もこなし、いよいよ本番当日を迎えた。

 

本番は、目の前のライトがメチャメチャ眩しかった為客席は全く見えず、けれどもそれによりがっつりゾーンに入れた私は、過去最大の集中力で歌の世界に入り込んだ。

鉄矢とともに。

 

曲調が盛り上がると共に鉄矢の数も徐々に増えていき、それはそれはあつくるしい歌に仕上がっていく。

 

オーラスでは、鉄矢はきっと10000000人くらいになっていて、一人で歌っているはずなのに合唱を歌っているかのような一体感が生まれていた。

 

鉄矢に支えながら、初めてのボイトレ発表会は終了した。

 

もう大満足だった。

 

出来はよくないだろう。

 

感情移入しすぎで、聞いてる人には何も伝わらなかっただろう。

 

なんなら嫌悪感を抱かれたかもしれない。

 

でもいい。

 

練習で積み上げてきた物が全部とはいわないけど、ほぼ出し切れた。

 

まだまだ未熟な私には、これ以上の歌を今はきっと歌えない。

 

緊張せず、思いっきり歌えただけで今は良しとしよう。

 

けれども。


課題は山積みだタラー

 

これからも褒め上手な先生のもとで、その課題をクリアしていけたらと思う。

 

たまーに「私、意外と歌うまいかも」なんて勘違いさせてもらいながら。

 

ちなみに。

 

歌った曲は、秦基博さんの「鱗」です。

 

ほんと、いい曲。