眉村 卓 著

 

昭和ひと桁生まれの作家が、奥様のために書いた作品集。

奥様が、癌を患い、余命宣告を受けた。

それをきっかけに、一日一話を書くことに。

読者は奥様だけ。

書くにあたり、自分で、細かな制約を設けた。

テーマとか、長さについて。

また、エッセイにならないようにとか。

 

結局5年ほど続いた。

最終話が、1778話目となる。

その中から選んだ作品にプラス、作家による注釈、

奥様の発病から闘病のこと、

読者は妻だけと決めて書いた話だけど、出版することになった経緯なども。

 

読者が奥様だから、病状や死を想起させるような話にならないよう配慮するが、結局、その枷があるからこそ、俳句を詠むようになったと。

俳句も掲載されている。

無意識におのれの心情を抑圧してしまうと、その感情のはけ口として、句作にのめり込むようになると。

句作に感情を噴出させたわけだ。

興味深い。

 

男の人は、いくつになっても、ロマンチストなんだと思った。

一日一話を読んだり、読んでもらったりしていた奥様。

そこにも、夫への敬意と愛情がしのばれた。

うらやましい夫婦関係だな。