川上弘美 著
よくよく考えてみれば、どろどろしたウェットなマターをはらんでいるストーリー。
でも、軽いタッチでエアリーな仕上げ。
普段の暮らしに不思議要素を織り込み、それなのに、ナチュラルな仕上がりで、これが川上弘美らしさかな。
おしゃれなエッセーを読んでいる感覚。
短編集です。
どの短編もさらりと読めます。
表題の短編「ぼくの死体~」は、
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あたしが中学の時、父が自殺した。
その父の遺言で、25歳年上の女性を、年二回訪問することを、あたしは18年間続けている。
行くと、毎回ひとつの質問をされる。
その関係の中で、父という人間を感じ、形作り、ずっと思っていられる。
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と、いうような・・・。
語り口調からは、押しなべて淡々とした日常のストーリーですが、その中に、驚きの設定や発想のアイテムが自然にあり、独特の空気感を持つ作品ばかり。
私は、「なくしたものは」が、特に気に入りました。
展開、構成が、粋でした。
また、「スミレ」は、精神年齢と実年齢の、二つの生活があるストーリーで、たいへん興味深いものでした。