科学絵本『みずとはなんじゃ?』から


かこさとしさんの最後の科学絵本です。問いから始まります。

表紙は、水を飲む子ども コップの水を眺める子ども 雨に傘をさす子ども

命に大切な水のあれこれを、深く広くおもしろく書かれています。

 

科学絵本は 科学の知識と絵本  絵とことばのくみあわせ

感動 興味 見る 考える 確かめる 知る

     (ベーシック絵本入門2013年)

 

 

私たちが生きていくうえで なくてはならない大切な水です。

私は 一年前の今頃 ヒマラヤトレッキングに行った時の水が浮かびました。

私は、2014年ネパールの学校へ教材を届けに行きました。

山形ロータリークラブが援助していた学校2校です。

現地でサポートしてくれたのが、友人の義理の息子ネパール人サティスです。

彼は カトマンズで山岳ガイドの会社をやっています。(横で失礼)

翌年2015年に大地震がありました。

ネパールのその後が気になっていました。

「ネパールにきてくれることが ネパールの復興になるからきてください。」

と言われていました。

 

昨年2023年 セカンドカーブのご縁で再度ネパールへ行くことができました。

赤いバケツは 山小屋でもらったお湯です。

これで髪の毛から体全部を洗いました。日本てぬぐいが役立ちました。

 

ネパールは子どもをとても大切に育てています。

以前は、カトマンズの街なかには小さい子どもを抱いた母親を大勢みかけました。

井戸の周りに集まって お喋りしている光景がみえました。

今回見た井戸には、人の姿はなく 水には藻が浮いていました。

2014年にサティスは、ネパール初のダムを 嬉しそうに案内してくれました。

私は、まず 水から飲み水を連想し、水を中心に数字で調べてみました。

 

Q1   世界の人口81億1900万人(2024年最新)で

  安全な飲み水を利用できていない人口はどのくらいだと思いますか?

 

① 約 1億人

② 約 22億人

③ 約 44億人

答えは ②約 22億人 予想より多いですか?それとも 少ないですか?

 

大切な水を確保するために、海外で活動している方もいます。

中村哲医師  1984年日本キリスト教海外医療協力会から派遣 

        アフガニスタン 医療支援と用水路の建設

        生活の安定をもたらす 2019年銃撃 没

        ペシャワール会に引き継がれている。 

 

ダルビッシュ有 2007年 水基金設立 日本水フォーラムと協力 

       (幼少期イランで干ばつ体験)

        11か国16のプロジェクト

        ネパールの村の中学校に水道設備など

 

 

日本の飲料水事情

 安価で安全 豊富な降水量だが、利用できる水量は限られている

 災害時対応・渇水や水質汚染など重要な課題だそうです。

 

かこさんは 『みずとはなんじゃ?』を書いたのは なぜ?

 仮説 命を支える水を 大切と思っていたからではないか

 

 かこさんが 敗戦後会社員をしながら川崎の子どもたちでセツルメント

 (ボランティア)をしていました。ここで紙芝居を始めています。

  近くのどぶから蠅や蚊が発生したそうです。赤痢や日本脳炎が心配。

  また よく停電もあったそうです。

 

これは 一年前の今頃ヒマラヤトレッキングの山小屋のディナーシーンです。

これ、停電です。突然の停電は、よくあることでした。

ご馳走がすごいでしょ?

※撮影者のたかたかさんと写っているばくさんに写真掲載の許諾をいただきました。

水は命にかかわります。そこで乳幼児の死亡率を比較してみました。

 

日本の乳幼児死亡率 

1950年 60.1/1000人

2012年 2.2/1000人 ※ネパール 41/1000人

 

この数字から 戦後の日本1950年から乳幼児死亡率はかなり減少していること    がわかります。一方 ネパールでは まだ乳幼児死亡率は高いです。

でも、ネパールには、統計の数字に表れない豊かさがたくさんあります。

 

結論 かこさんは こうしたことから 未来の子どもたちに

   考える力生きる喜びをおもしろく伝えたいと思ったのではないか。

   今までの集大成として 大人にも伝えたい熱い思いがあった。

   それが だれにも身近にあって、生命をつなぐ水だった。

   

 

かこさとしさん キーワード 私なりに

1 専門的な知識  有機化学の科学的知識 探究心 実行力 洞察力 頑張る力

2 現実に対する厳しい目  

3 子ども(人)に対するあたたかいまなざし

 「小さなアインシュタイン」の心に火をつけたい

という科学絵本に対する熱い思いがあった

 

 

『科学者の目』 2019年発行 1969~1年間朝日新聞日曜版に連載

      人類のあゆみに灯をともした41人の科学者の業績とその<目>

例えば エドムンド・ナウマン 

ドイツ人 明治時代に招かれて地質学を教えた日本列島の構造研究 

「龍の骨」を古代象と見出す。発見した人の名前で ナウマン象

 かこさとしさんは この科学者の紹介のあとに こう書いています。

「私は、山を見たり登ったりするごとに、この日本の山を見つめ見ぬいた科学者の目  を、いつも思い出すのである。」

かこさとしさんの熱い情熱が迸っている本です。

 

ここで かこさとしさんを辿ってみました。私なりに

 

加古里子 かこさとし 里子は俳号 中島哲 なかじまさとし

1926年3月31日~2018年5月2日 

                 

1945年    19歳  敗戦

1950年    24歳 セツルメント(ボランティア)社会人 紙芝居製作

1959年    33歳 『だむのおじさんたち』

1966年    40歳 『かわ』   2016年 7mの『絵巻かわ』追加広大な海

1969年    43歳 『海』

1973年    47歳  退職

1975年    49歳 『地球』

1978年    56歳 『宇宙』

1995年    69歳 『人間』      ※構想から18年

2011年    85歳 『万里の長城』  ※構想から30年

2018年  92歳 『みずとはなんじゃ?』 

2019年   『科学者の目』    ※1996年1年間朝日新聞連載を新装

2022年   『あめ・ゆき・あられ・くものうろいろ』

2023年   『かわはながれるかわははこぶ』『うみはおおきいうみはすごい』                                    ※2005年 農山漁村文化協会の新装版

 かこさとしさんの新装版が没後も出るということは、

 科学技術が日進月歩のなかでも かこさんの作品は普遍性があるということです。

 その価値を知った人は、理解し伝えていくことが大切だと思いました。

 

かこさとしさんは、絵本・科学絵本・童話等の作品は500点以上あります。

作家活動の他に、文化の研究者で、教育実践活動 大学講師、テレビのニュースキャスター‥等多岐にわたります。

絵本は、1ページ1ページ、ひとつひとつを丁寧に丁寧に描いています。

だから、子どもから大人までいつまでもいつまでも心に残るのでしょう。

 

1973年   『からすのパンやさん』  40年後の2013年に4羽の続編  

1973年   『どろぼうがっこう』       40年後の2023年に続編 

 

かこさとしさんは、本の完成の前に、尊敬するそれぞれの専門分野の方々に校閲・矜持・助言をいただいていたそうです。

また、「戦争はなぜ起こるのか」を突き詰めて 高名な経済学者を訪ねたこともあったそうです。私は、人間の問題として、真摯に向かう姿に感動しました。

 

 

この世界に対して目を見開いて、それをきちんと理解して面白がってほしい     -『未来のだるまちゃんへ』P251 2014年-

 

私は、SCサークル絵本たびの事前勉強会で、かこさとしさんのブックトークをしました。それをこの科学絵本から連想して面白がって数字で表してみました。

かこさとしさんは、知れば知るほど偉大な方でした。

6月にかこさとし絵本館に行くのが楽しみです。