この季節に京都へ出かけるのが、毎年恒例の行事になって来た。
京都市内各地で開催される国際写真展、通称KYOTO GRAPHIE。

(2024.04.13-05.12 主催:一般社団法人KYOTOGRAPHIE)


今年は同時開催されているKG+の会場へも数ヵ所立ち寄れて、

1泊2日の旅と限られた時間ではあったものの、

なかなか充実した2日間だった。

忘れないように、感想を残しておこうと思い立ち、
本当に久しぶりのブログです。

まず、2日目の朝一番に出かけた「便利堂コロタイプギャラリー」で
開催されていた工房開設120年記念「承前啓後」
「野村佐紀子」展

宿泊していたホテルから、古い街並みを抜け7〜8分の所にあるため、
10時のオープン前に到着してしまった。

あと10分くらいだし、待ちましょうと日陰で待機している時、
念の為、とパンフを見ていたら

「Closed:Sun」の文字が。
おっと今日は日曜日ではないか!
だめじゃん、と次の目的地「建仁寺」に向かおうと数歩歩き始めると、

1台のタクシーがやって来て、ギャラリーの前で停まり、1人の女性が降りて来た。
そして「すぐ開けますから!」
「今日はお休みですよね?」

「いえ、やってます、今すぐ開けますから、ごめんなさい」と中へ入っていかれた。

もう一度、パンフを見ると「会期中無休」と小さな文字。
老眼の私の目は、小さい文字をよく読み飛ばすのだ。
そして、結局10時前に開けてくださり、恐縮しながら中へ入った。

なぜ、こんなに中に入るまでの過程を細かく書いているのかと言うと・・・。
コロタイプ」写真が

めちゃくちゃ良かった

のだ。

コロタイプとは、
写真古典印画技法で、19世紀中頃にフランスで発明され、

明治初期に日本にアメリカから技術輸入されたそうです。
(便利堂パンフより)
写真を現版として、なめらかでなんとも言えない色の再現、
吸い込まれそうな階調に、くらくらしそうでした。
オフセット印刷やインクジェットプリントなどは、
4色または8色の点の集合で色の濃淡などを表しているのですが、
コロタイプはドットがないので、
とてもなめらかで自然な濃淡表現になるそうです。

野村左紀子さんの1つ目の部屋の作品は、

ダメージのある古いフィルムを使って撮影された写真や

「ヤレ紙(かみ)」という印刷製造の際に発生し、
廃棄されてしまう紙に擦り重ねた写真などの展示でした。
古いフィルムだから生じる斑点のようなシミが

面白いディテールを見せていて、
コロタイプによるオリジナルカラーとも相まって、
日常的な風景が特別な風景に見えるんです。
「コロタイプ」 という技法は、名前こそ知っていましたが、

どのような方法で印刷されるのかもわからないまま、
奥の部屋に進むと、

そこは、便利堂さんの120年の伝統を支えてきた工房の風景と職人さんたちのポートレート、

そしてカラーの花など、迫力の作品群でした。


↑実物は目を凝らしてやっと花が浮かび上がってくるほど
 漆黒でマットな写真 

↑吊るされた紙の側面なのでしょうか。
筋状のグラデーションが美しい。

写真では、その繊細な質感が伝えられないのが残念!
これは間近で見なければ、わからない
緊張感と静寂と力強さを感じる写真であり、プリントです。
ここでは紹介しませんが、
職人さんのポートレートでの顔や手の皮膚の表現が

特に好きでした。
思わず「こんな風にポートレート写真撮ってほしい」と

口に出してしまったほど。

 

たっぷりと写真を堪能した後、オーナー(?)の女性の方に、
コロタイプ写真の感動を伝え、印刷方法をお尋ねすると、

なんと、特別に印刷工場の中を見せてくださったのです。
日曜日はお休みなので、無人の工房に

数台の印刷機が並んでいました。
中に入るとツーンとインクの臭いが鼻を付き、

思わず「いいにおい〜」と言ってしまいました。
新聞とか雑誌とか、私、インクの臭いが好きなんだということを

改めて自覚。

すっかりコロタイプ写真に魅せられてしまい、
「ワークショップなどはありませんか?」とお尋ねしてみると

 

やっぱり、ありました!


ベテランの職人さんが、丁寧に教えてくださるそうです。
これは、受講してみたい!

同行した芸術大学通信過程で写真を専攻する息子も
このプリントにとても興味を持ったようで、

私よりも先にワークショップに参加しそうな勢いです。