「ばあちゃん、独立国になればいいよ。ミクローネーションって言うんだって・・・」

 

孫の翔平が祖母の嘉代に言う。

嘉代はポカーンとした顔。

寝耳に水の様相だ。

 

 

日本という国から独立する?

嘉代にとっては、露とも考えたことがないことを14歳の孫がさらりと言う。

 

このシナリオを考えていたのは、2020年だった。

まさにコロナが世界に広がっていった年。

正体がわからず、恐れ、行動と思考が停止したような年だった。

 

コロナは何をこの現在の地球にもたらしたのか。

ずっと考えていた。

ここで一度立ち止まり、これからの未来について、

しっかりと考え直す時間を与えてくれたようにも思った。

 

翔平は、傷つきやすく繊細な少年で心優しい。

忙しい母に自分の心の内を話すこともできず、

そうするうちに自分に自信を無くし、人の視線が怖くなった。

「こんなダメな自分を他人はみんな笑っているのだろう。」

翔平は家にこもってひたすらゲームに没頭した。

何かを変えたい、思い切って外に飛び出したい。

そんな衝動が時々襲うけれど、勇気がなかった。

 

そんな時、島の廃島を訴える陳情書が提出されることを知り、

嘉代に会いに島へ行く。

 

長い年月をこの島で生きてきた嘉代の島への想いを聞き、

なんとか島を残すことはできないのか。

廃島派に島を追い立てられずに済む方法はないのか。

 

14歳の少年が懸命に考えたのが「独立すること」だった。

 

世界にはミクロネーションを主張する国は80近くある。(wikipediaより)

政府や国際連合などの主要な国際機関によって承認されていない国ではあるが、

少人数で独立した意思を持って、自立し、パスポートの発行も可能らしい。

 

少年はインターネットで得た知識で、島を存続させ、嘉代がいつまでもこの島で暮らすためには、

ミクロネーション国家になることが最善の方法ではないかと考えたのだ。

 

私は、この行き詰まり感のある日本の中から、新しい国を創ろう!と立ち上がるくらいの

意思ある若者が生まれてきてほしいと思っている。

周りに迎合して、周囲と仲良くやっていくのも良いことではあるけれど、

この日本や社会に疑問を持ち、自分が世の中を変える!くらいの気概を持つ若者が

この日本を牽引していってほしい。

そんな想いで、翔平に先頭のセリフを言わせた。

 

家にこもっている間、ただただこもってゲームをしていただけではないのだ。

自分が社会でうまくやっていけないことに悩み、その原因を考えに考え、

唯一の理解者だと思っている祖母の住む島の危機を知った時、

翔平は自発的に、自分の意志を持って行動に出た。

 

 


彼の宣言が最終的にはどうなったか。

それは映画を観て、そしてそれぞれで想像してほしい。