園行事の大きなものの一つに“生活発表会”があり、2019年まで3・4・5歳児が、ごっこあそび、生活劇、劇等を、当日お家の人に観てもらうものとして行っていました。

 

ホールの奥にテーブルを繋ぎ合わせた舞台ができ、それに向き合うようにつくられたひな壇の客席には、50名以上の3~5歳児の保護者が注目の眼差しを舞台上に向け、こども達、担任、保護者、職員の熱気が漂う…といった雰囲気だったと記憶しています。

 

3歳児の発表の中身で多かったのは、こども達が日々楽しんでいるごっこあそびでした。こども達への負担が大きくならないようにと“普段通りに”というのを合言葉に、当日の発表に向けて練習を始めていくと、必ずぶつかる壁がありました。それは…

 

『何をしているか分らない…』

 

こども達が普段しているごっこ遊びといえば、絵本の登場人物になりきってするものや、あそびから派生して盛り上がった名もなき遊びのもので、それを“普段通り”にお客さん(観に来てくれた他クラスの子や職員)の前でやると、決まって「何をしているか分らないから、もっと観ている人が分りやすいように変えてみたら」という声をもらうのでした。

 

観ている人が何をしているのか分かるものでなければならない…担任がそんな思いのもと、「もっと〇〇するといいんじゃない?」と、こども達のごっこ遊びが大人主導型にシフトしていくことになり、結果こども達が本来楽しんでいたものからは離れていき、“普段通り”ではないものを当日みせることになってしまうのでした。本当に観せたいのは“普段通り”、でも観ている人は分らない…という矛盾。担任はそれと向き合い、飲み込んで、やるしかないというのが現実だったように思います。

 

また、当日たくさんのお客さんの前で極度に緊張してしまう姿、出番が終わると気持ちの糸が切れ、その後の4歳5歳の発表を観るどころではなくなってしまう、担任はそれをあの手この手で惹きつけ、その日を終えることに奔走するのでした。

 

そんな3歳児にとっての生活発表会が、どんなものであることがこども達の思いに一番寄り添っていることになるのか?みんなで改めて考えることにしました。

 

3歳児にとってのごっこ遊びは…

・みせるためではない普段のままこそが楽しい。

・傍からすれば何をしているか分らないが本人たちはそれが楽しい。

・日々のくらしの中で十分に楽しんでいれば、それで満たされているのではないか?

・みせるために大人が手を加えてつくっていくことを、こども達は望んでいないのではないか?

・「3歳児は舞台にあがるだけで上出来…」なんてことも聞かれていたけど、そもそも極度の緊張を強いてしまうことは、3歳児の育ちにはなくてもいいのではないか?

 

以上のような話し合いのもと、

・普段通りがこども達の一番楽しいこと。

・誰かにみせるみせないとは関係ない。

・生活発表会の場がなくなっても、普段のくらしの中でごっこあそびは楽しむよね!

 

というところに着地し、“当日は参加しない”ということになったのでした。

やはり、“3歳児の普段通りは、普段の暮らしにしかない!”ということを再確認できたのでした。

 

次回、4歳児編につづく。

 

セノ