とちの実ニュース10月号にも掲載したタワー(名称:とちタワー)の角(つの)と高さに関しての追記です。
とちの実ニュースには角をつけるまでの経過を書きましたが、ここでは角があることに関して記したいと思います。
ある日、5歳児の女の子がとちタワー2段目でせっせと泥だんごをつくっていました。何気ない風景ですが、ここに角の効果が表れていると感じました。
角は2段目の床の中心に立っています。また、この子の体の一部が角に触れていることが見て取れます。この事から”自分の体はほぼ中央に位置している”ということを、体で確認できているということが言えます。つまり、この位置は”安全”だということを周りを見ることなく認識できているわけです。
もし角がなかったとしたら、まだ後ろに床があると思い後ずさりして不意に落下…なんてことが起こり得るかもしれません。とちタワーでそのような落下が起きていないのは、まさに角があることによる”安心の担保”の効果に他なりません。
また、空間(床の広さ)の認識がよりはっきりしたということも言えるのではないかと思います。とちの実ニュースでも記しましたが、角がついた途端に「怖い」と言った子がいて、おそらく角が立ったことで床部分の中心(目印)ができ「(床が)ここからここまでしかない」と認識されたからこその「怖い」だったのだろうと思いました。
設置するにおいても、ガッチリ固定するのではなく、あえてグラつきを残すことで油断を招かないようにすることも重要だと学びをもらっています。
もう一つ、”高さ”という視点からも記したいと思います。
とちタワーの1段目は80㎝、2段目は120㎝。(※高さに関しては一律にこれがいいという目安はありません。とちの実も職員間で議論を重ねこの高さに決まった経緯があります。その園のこどもの姿によって高さは変わりますし、そこに関わる職員の学びなくしてはつくれないものだと認識しています。数字だけの模倣はやめてくださいね。)
地面から2mに位置する2段目に立つとゾクッとするような怖さを感じます。この怖さが無茶な事をしようと思わせない抑止効果になっているのだと思います。大人も足がすくむような高さでは、跳んだり走ったりなんてできるはずはないですよね。自然と両手両ひざをつきたくなるのが自然だと思います。もし高さがもう少し低かったとしたら、怖さが薄れ、過信から動きが大きくなってしまい、不意な落下…なんてことが起こる可能性が高まってしまうのだと思います。
それに、決して簡単に登れた訳ではなく、何日も何日も全力で挑戦を重ね、やっとの思いで登ったという事実が、”それぐらい高いところにいる”ということを、その子自身が自らの経験で分っているということも重要な事だと思います。経験から認識する”高さ”ということが言えるのでは思います。(※大人が手を貸して、こどもを高い所に登らせない理由の一つでもあります)
こども達は日々環境と対話し(あそび)ながら、自らの感覚を研ぎ澄ませて、危機察知能力を育んでいます。ただ遊んでいるだけではなく、そこから多くの生きる知恵・力を培っているのだと思えば、本当に「あそびは学び」なんだと、とちタワーをはじめ環境を通してこども達に気づかせてもらっています。感謝ですね。
セノ


