読響第215回日曜マチネーシリーズ

2019 3.24〈日〉 14:00  東京芸術劇場

 

[出演]

指揮:シルヴァン・カンブルラン
ピアノ:ピエール=ロラン・エマール

[曲目]

ベルリオーズ:歌劇「ベアトリスとベネディクト」序曲
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 作品37
ベルリオーズ:幻想交響曲 作品14

(ソリスト・アンコール) Gyorgy Kurtag : Games (Játékok) から Lendvai Ernö in memoriam, Aus der Ferne

 

この公演を以って9年の任期を終えシェフを退任するS.カンブルラン。2009年頃からプロオケを聴き出した私としては、読響の定期会員数年とちょうど時期が重なる、その指揮に触れる機会の多いシェフでした。印象深かったのは、やはりトリイゾとアッシジの聖フランチェスコの公演。来期はS.ヴァイグレの着任の年度ということもあるからか登場しませんが、東響のスダーンのように再来期以降、振りに来てくれるでしょう。

 

弦は16型(中プロは12型)の通常配置。Hr・Hpは左手。Timが最奥中央で2番Timがその右手の配置。

コンマスは長原(以下敬称略)、サイドに小森谷、パートトップは2nd瀧村、Va柳瀬-鈴木、Vc遠藤、Cb大槻。

管の1番はFl倉田、Ob辻、Cl藤井、Fg吉田、Hr松坂、Tp長谷川(中プロは田中)、Trb?、Tub?、Timに武藤(2番に都響の久一)。

 

シェフ退任コンサートとあって、1曲目前、登場時から熱い拍手。

前プロの序曲はCDで聴いたことがあっても実演初かも。ベルリオーズらしいオーケストレーションが聴こえてきて良かったのですが、さすがのカンブルランでもフランスのオケのようなサウンドを引き出すには至らずといったところ。

 

個人的には、エマールのピアノが冴えわたった中プロがこの日一番の聴きものでした。これまで聴いたことのないようなアーティキュレーション、対旋律の描き出しが聴かれ、適度なルバートに聴き応えが感じられました。現代音楽のスペシャリストたるクールさと、時に激しいアクションを交えた表現意欲が素晴らしかったです。アンコールは一転してただならぬ曲調のクルターク。スローテンポの中音域を抜いた、高音と低音が調和しないこの曲はとても新鮮で、お客さんの反応はあまりありませんでしたが、私はとても満足感が得られました。

 

メインの幻想交響曲。演奏は至極オーソドックスで、4楽章が気持ち遅めのテンポをとったことと、バスドラが2台に増強されていたことくらい。半年前のエッティンガーのいわば劇薬のような伸縮自在でメリハリを多分に効かせた演奏を聴いてしまうと、どうしても普通に感じられ、読響は100%の実力を出していたと思いますが、この日は縦の揃わないところが多めなのとCbの非力さがどうしても気になってしまいました。それでも3楽章の浦さん・北村さんのコーラングレ・Obや4楽章の武藤さん・久一さんのTimはとても良かったです。

 

普通のカーテンコールで終わらないのはさすが読響!

3プル表にいた井上さんが舞台袖に下がるので何かあると思っていたら、3~4人がボンボンを持って「天国と地獄」、カンブルランも一緒になって軽くヘッドバングし出すと何だか笑えてきました! この乗りの良さは他のオケでは得難いものがあります。Mr.Sの90歳の誕生日のコンサート(メインがショスタコ5番@TOC)ではHappy Birthday to Youを演奏していて節目節目を大切に楽しくお祝いするカルチャーに立ち会えて、読響の元定期会員としてとても満足感のある演奏会でした。

 

「天国と地獄」終演後(なお、この日は幻想演奏後は写真OKの掲示)

舞台後方には「ありがとう。シルヴァン。また、日本で会いましょう!」の横断幕

(本当にそんな気持ちです。是非「トロイアの人々」を!)

 

2度目のソロ・カーテンコールに応えるカンブルラン

 

 

幻想交響曲の実演の個人的順位づけは
BEST=P.ヤルヴィ/パリ管(2011年11月) @SH,MM
2=A.ギルバート/ニューヨーク・フィル(2009年10月)@SH
3=エッティンガー/東響(2018年10月) @MK

4=P.ヴェロ/仙台フィル(2016年4月)@SH

5=T.ソヒエフ/トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団(2012年12月)@SH
6=インバル/都響(2018年3月)@SH

7=カンブルラン/読響(2019年3月)@芸劇
8=チョン・ミョンフン/N響(2011年2月)@NH
9=山田/スイス・ロマンド管(2014年7月)@MM
10=デュトワ/N響(2014年5月)@SH