都響スペシャル
【アラン・ギルバート首席客演指揮者就任披露公演】
2018年7月16日(月・祝)14:00開演(13:20開場)
サントリーホール
指揮/アラン・ギルバート
[曲目]

シューベルト:交響曲第2番 変ロ長調 D125
マーラー:交響曲第1番 ニ長調 《巨人》(1893年ハンブルク稿/「花の章」付き)

 
こちらも当日券にて2日目の公演を(いち在京オケ・ファンとしては充実した3連休になりました、行けなかった利尻は今日は晴れ間があったようですが)。
曲順に12型、16型両翼配置でチェロバスが左手(ともに外側が表)、Hrは前プロ左手、メインは右奥、Hpがその右隣に2台でTimは中央、Tpは右手、左にTb-Tubの配置。低音を左に集めたからか、FgとClは通常と入れ替えたRCO配置。
コンマスは矢部(以下敬称略)、サイドに四方、パートトップは2nd双紙、Va鈴木、Vc古川、Cb池松-山本。管の1番はFlトラで髙木綾子(とのこと)、Ob広田、Cl三界、Fg長、Hr有馬-メインのステージ裏は西條、Tp前プロ(,メインのステージ裏)岡崎-メイン高橋、Tb?、Tub?、Tim安藤。

前プロ、シューベルト2番はスダーンの東響シェフ退任コンサート以来で、4楽章冒頭をクァルテットのように4人に刈り込んだ工夫が印象的でまさに東響との集大成といった演奏が記憶に残っています。実演の聴き初めは2010年頃のプレートル/WPh来日公演で、ウィーンフィルの豊かな響きとプレートルの粋な手綱さばきに見惚れて、一気にシューベルト好きになったのでした。

都響のシューベルトはインバルとの5番以来で、先日のメンデルスゾーンと同様に12型ながらどっしりと低音から構築するスタイル。さらに1楽章の1stはずっと無窮動な音符が並ぶので、オケとしての性能が計れてしまうシビアな曲ですが、私のお気に入りのオケ、都響は安定の音程・ザッツを確認できました。

A.ギルバートは中庸を得たテンポ設定ながら、細かいニュアンス付けを施していて、ぜひシューベルト・チクルスをお願いしたいほど。

気づいた範囲で1楽章は235~236小節目のTpを気持ち強調、371小節目のゲネラル・パウゼは少し長めにとっていたかも知れません。2楽章は第二変奏の43小節目からの2回目の繰り返しは音量を絞った表情付け。3楽章のTrioは弦の人数を半分に刈り込む工夫。4楽章では、91小節目のフェルマータで譜面にないわずかなデクレッシェンド(8番ラストのデクレッシェンドを連想させます)。250~251小節目のTpは気持ち強調。404小節目の再現部は冒頭よりも音量を抑えるニュアンス付け。509小節目からはフェルマータに向け、譜面にないリタルダンド。

こうした細かい仕掛けが私の好みから大きく外れていないので、とにかく聴いてきて心地良く、メインともども久々にクラシック音楽に浸れた2時間になりました。

メインは2016年の上岡/NJP以来で、冒頭のA音は極限まで絞ったところが共通しています。4楽章ラストのたたみ込みも似ているところが面白く、マゼールのようにどんどんテンポを落とす演奏も好みですが、こちらも聴いていてとても爽快でした。1楽章のfigure26前後、figure31前後などは音の密度やテンポ感が素晴らしく、「都響を聴くならやっぱりマーラーを、マーラーを聴くならやっぱり都響で」と思わせてくれる瞬間でした。

今回取り上げられた版は2014年ころに来日公演のあったヘンゲルブロック/北ドイツ放送響(現NDRエルプ・フィル)の初演したものとのことで、花の章があるのと5楽章(通常の4楽章)のTimの音がいろいろ入っているのに気づくくらいでほとんど現在最も演奏される版・稿と変わらないように思われました。

この花の章、高橋さんのTpは音色は良いものの、不安定さがあったのはちょっぴり残念。件の北ドイツ放送響も意外に不安定でしたのでTp奏者には準備が難しいのかもとも思ったり(音域としては3番のポストホルンとあまり変わらないようにも思いますが)。

5楽章はやはりfigure51からの音響の積み上げが聴きどころで、先述のように上岡さんと同じく破綻なくどんどんテンポアップしていくのが聴き応え充分。ラスト、D-durの和音がホールに消え入るのを聴ききって大きな拍手となりました。

ギルバートはステージ裏(P・LA・RA)だけでなく、LB・LCやRB・RCブロックにもオケ・メンバーを向かせ答礼。ソロ・カーテンコールは矢部さんを連れてきて讃えあっていました(寝たい・飲みたいのジェスチャーも)。なお、両曲ともスコアなしで指揮棒あり、前プロは指揮台なしでした。