大津と長浜、共に琵琶湖水運で栄えた港町には、華麗な曳山があります。

 

曳山は大津は天孫神社、長浜は長浜八幡宮の祭礼に登場しますが、

それぞれの神社に芭蕉句碑がありました。

 

 

■大津 天孫神社

大津祭は天孫神社での籤改めから曳山巡行が始まります。

 

天孫神社前の歩道に芭蕉句碑があります。

 『ひらひらと あぐる扇や 雲の峰』

元禄7年6月中旬、芭蕉は天孫神社近くの能太夫本間主馬の家を訪問し句会を催しました。


主馬が扇をひらひらとさせ舞うようすを湖上に浮かぶ雲の峰のようだと讃えてます。


「雲の峰」といえば膳所城址の湖畔に「湖や 暑さを惜しむ 雲の峰」の句碑があります。

芭蕉は膳所の湖畔の能太夫遊刀の家でこの句を作りました。


 

■長浜八幡宮

延久元年(1069年)、源義家公が後三条天皇の勅願を受け、京都石清水八幡宮より御分霊を迎えて鎮座されました。

長浜曳山まつりの神事はここが出発点です。

美しい参道脇に芭蕉句碑がありました。

『をりをりに 伊吹をみてや 冬籠』

元禄4年(1691年)上方から江戸に戻る途中、 大垣の千川亭で作った挨拶吟。


千川亭の主人は立派な屋敷で雪の伊吹山を眺めながら冬を越すのですね。

 

 

■長浜曳山展示館

 黒壁の続く大手門通り、米川の大手橋脇に曳山展示館があります。

 長浜曳山祭は4月中旬に催されますが、曳山展示館では常時お祭りの雰囲気を味わえます。

長浜の曳山は13基、そのうち12基が子供歌舞伎が演じられる曳山です。

曳山の舞台では子供歌舞伎が演じられます。


曳山展示館のモニターで子供歌舞伎の演技を楽しみました。

子供歌舞伎を演じるのは毎年4基だけ、

当番の町で役者になる子供達は春休みに入ると猛練習を始めるそうです。



大津祭「月宮殿山」の見送幕はベルギー製毛綴織「トロイヤ陥落図」でした。

このタペストリーは5枚1組で「イリアス物語」の情景を織り出した中の5枚目。


トロイヤがギリシア軍に攻め込まれた情景で木馬が描かれた構図の一部です。


長浜曳山展示館にも「イリアス物語」のタピストリーが展示されてました。


鳳凰山見送幕「ヘクトールと妻子の別れ」

「イリアス物語」タペストリーの3枚目、

「出陣するトロイヤの王子ヘクトールと妃アンドロマケ・幼子アスチュアナクスとの別れ」の図の3分割された右側です。


王子ヘクトールと幼子の部分は祇園祭鷄鉾の見送幕に使われてます。


※問題児パリス王子の兄ヘクトール王子はトロイヤ軍最強の戦士、しかしアキレスとの戦いに敗れ遺体が辱められました。

ブラッド・ピットのアキレス、強すぎ😎


展示館には翁山の見送幕「2人の武将」が展示されています。

この図の出典には諸説ありますが、こちらも16世紀にベルギーで製造された毛綴織です。


京都・大津・長浜、豪華な山鉾の見送幕に町衆の経済力と文化の高さを感じました。


【イリアス物語のタピストリー】

①「パリス王子とヘレネー王妃の出会い」

 加賀前田家所蔵(完品)

②「トロイ王と王妃ヘカペーの祈り」

 祇園祭鯉山懸装品

③「ヘクトール王子と妻子の別れ」

祇園祭鷄鉾・霰天神山、長浜曳山祭鳳凰山

④「ヘクトール王子の遺体返還を乞うトロイヤ王」芝増上寺祭壇背景(明治42年焼失)

⑤「トロイヤ陥落図」

大津祭月宮殿山・龍門滝山、祇園祭白楽天山