第200回目
蘇我馬子の誤算
馬子は厩戸皇子(聖徳太子)
に自分の最愛の娘である
刀自古郎女とじこのいらつめを将来の
皇后に房わしいとして、
妻合わせました。
清楚な美女の上に才知、
学問にすぐれ、
馬子の血縁の女性の中
のみならず噂の美女と巷門
でも評判の女性でした。
ところが実の孫、
蝦夷えみしの長子入鹿いるかが自分
に懐なつかず、
いつも白い目を向けて反抗的
な態度を取り、
その理由もわからないままで、
悩みの種になっていました。
或る時馬子は入鹿をつかまえて
「お前は何故ワシを嫌う
のか?」
とたずねると
「私は自分よりも偉い人は
嫌いなだけで爺々じじ様を
特別に嫌っているわけ
ではない。」
と答えを聞き馬子は自分の
若い頃を思い出し、
そんな時もあったのを
思い出しました。
入鹿は父蝦夷を越える
大臣になるかも知れないと
思いました。
息子の蝦夷を見るにつけ、
小粒に見えていましたから、
入鹿の尊大な態度が頼もしく
見えました。
推古天皇を頂点に
聖徳太子を
摂政に据え、
馬子は思い通りの日々を
送っていました。
それもそのはず宿願であった
大和の国最大の本格的大寺院、
飛鳥寺あすかでらを完成させて、
丁未の乱ていびのらんで誓った
大事業を成し遂げたのが
46才の働き盛りの時でした。
馬子の磐石ばんじゃくの体勢を
崩せるような人物や豪族は
いませんでした。
70歳を越えても益々元気で
我が世の春を満喫してして
いました。
そこに、突然の訃報に接し
てしまい、
まさかの聖徳太子の突然の
死でありました。
その馬子の落胆ぶりは
凄まじいもので、
太子の死を境にすっかり
生き力を失ってしまいました。
真心のささやきを貴方へ❤️