第179回目
馬子は額田部大后ぬかたべのおおきさき
の背中を押す。
馬子は崇峻帝すしゅんていの後任の
天皇は敏達天皇びだつてんのうの大后
で祖父に継体天皇けいたいてんのう、
父は欽明と高貴な血脈を持つ
額田部(豊御食炊屋姫とよみけかしぎ
やひめ)
皇女以外に適任者は
いないと考えていました。
馬子にとっては、
蘇我稲目を源流とする
額田部皇女の母は
蘇我堅塩媛そがのきたしひめで、
祖父が蘇我稲目初代の稲目の
気質を色濃く受け継いでいる
と思われるこの姪めいは、
父稲目の良い質を全て受け
取っていると見ていました。
特に自分にはない、
人々を引き付ける明るさ、
器の大きさは天性のものが
あって
馬子は常日頃うらやましくも
思っていました。
朝廷での2大豪族のしかも
大和国古来からの大豪族で
ある物部氏を打ち倒した
馬子に逆らう者は表面上には
皆無になったところで、
額田部大后の首を縦に
振らせる大仕事が馬子には
持っていました。
敏達帝と馬子は反りが合わず、
決定的な不和の関係になら
ないように配慮してくれた
のは大后でした。
馬子は大后を大器と見ていて、
そのうち機会があれば皇位に
就いて頂いても良いと考えて
いました。
それこそ、
それは今ではないか、
この機会を逃さず是非とも
皇位に昇って頂きたいと
正式に申し入れをするべく
豊浦宮に仕向しこうし、謁見を
願い出ました。
すぐに面会のお許しが出て、
馬子はいつもよりは緊張
気味に挨拶をすると
「叔父上もお変わりなく
お過ごしでいらっしゃい
ますか。」
としとやかで高貴な
美しい
笑顔がありました。
馬子の内側での声で、
やはり天皇に相応わしい
お方である。と
ではどう話しを進めれば
良いかとの思案の中で
女性天皇は過去にもあったが
詳しく伝えられていない。
そこを熱意を込めてお話し
しようと心が決まりました。
真心のささやきを貴方へ❤️