5月24日  栴檀の美しい花






真っ赤な金魚草と薔薇






紫陽花





私は立派になった清麻呂
を見ながら、

もし大きな事件でも起きた
際には、

この弟が至近距離に居れば
心丈夫と思い

姉と弟の血のつながった
関係は有難いとひしひし
と感じていました。

清麻呂は一見優しそうに
見えて厳しい目をしている
のを感じて

「父上からはどんなお言葉
を頂いて都上りをされた
のですか?」

と聞いてみました。


「父は都はいろいろな人が
いる所、

悪人から善人まで、
金持ちから貧乏人まで
あらゆる人がおる、

決して油断してはならぬ、
見知らぬ者から声をかけ
られても応じるな。

特に遊び女には気をつけろ
と言われました。」

「ところで故郷くにのご両親様

の様子はいかがでしたか?」

一番気になる両親の近況を
知りたいと思い問いかけ
ました。


「二人共お年を重ねられ
ましたが元気にお過ごしです。

父上は郡の統治に腐心され
て毎日忙しくされています。

母上は来客のご接待と村人達
のお相手で良く立ち働かれ
ています。

村の人々の相談にも耳を
お貸しになり、

真剣に向き
合っておられるので人気が
あります。」


両親のお元気な姿が目に
浮かび、ほっと胸を撫で
下ろしたところで、


そこで夫の戸主が

「今日は清麻呂の歓迎会
ですから広虫がいろいろと
手配りをして多分ご馳走を
揃えてくれているはず、

さあさ皆で席に着き
ましょう。」


と上機嫌で先に立って客間
に案内をしてくれました。

夫の心使いもうれしく
なって、

いつもよりは上気して顔が
ほてっていました。


清麻呂、戸主と私の三人に
奥向きを差配する老女と
戸主の腹心の部下が加わり

賑やかに酒宴が始まりました。

全員が楽しげで頼もしい
清麻呂に好感を持ったの
でしょう。

この場の雰囲気が嬉しげに
変わって行くのが

私にとって
都上りをして初めての味わい
でした。

弟の存在は私にとって
大きな物なのを改めて感じた
夜の会食でした。



真心のささやきを貴方へ❤️





真っ赤な夕陽